「つーか、謝るくらいしろよなー」

 大袈裟な溜息を吐いて店内に入っていくそいつ。
 ……うっぜー! 俺謝っただろ! 聞こえてなかったのかよ!

「お…覚えてろよ…!」

 今度の嫌がらせターゲットはお前に決定だコノヤロー!
 小さな声で覚えてろと口にした時、ぴたりと奴の動きが止まった。

「……あんだって?」

 こ、怖!
 地獄耳かよこいつ……って、え? あ、あれ? じゃあさっきの謝罪は何で聞こえてないんだよ…。も、もしかして聞こえててああ言ったのか!?

「あ、え、あ、あはははは〜」

 苦笑い。そして、後退り、後退り。
 そして、――俺は走った。それはもう全力で走った。転びそうなくらい走った。











 コンビニなんて、探せばいくらでもある。目に付いたコンビニに駆け込むと、店員が目を丸くしながらいらっしゃいませと口にする。恥ずかしくなって急いで店員の見えないところに行く。
 ……もう、なんでもいいや。適当に買おう。
 俺はカゴを手に取り、ぽいぽいと甘い物とパンを放り込んでいく。ところでこの金はちゃんと勇者から貰えるんだろうな? じゃないと明日の俺の昼食が…!
 ぐるぐるとお腹を鳴らして机に突っ伏している自分を想像し、頭を抱える。嫌だ、絶対に嫌だ。なんとしてでも勇者からふんだくろう。あいつは……あいつは、勇者、だけど、悪い奴じゃ…ないんだ。勇者だけど、友達なんだ。