いや、というかどうやって入ったんだ…。普通の鍵ならまだしも、オートロックだぞ。
 眉を顰めて悩んでいると、峯岸がギロリとこちらを睨んだ。

「何突っ立ってんだ」

 早く茶を持って来いと顎をしゃくって指図され、ひくりと口が引き攣った。ここで無視しても追い出してもいいが、そんなことをしたら俺に明日はないかもしれない。こいつの一言で俺の運命なんて、すぐに変わってしまう。チッと小さく舌打ちをして冷蔵庫に向かって足を進める。田口はまだ寝てんのか…? 頼むから早く起きてくれ。そして峯岸をどうにかしろ。
 峯岸の横を通り過ぎると、鼻で笑われた。くそ、馬鹿にしやがって。

「……どうぞ」
「ドーモ」

 ドン、と叩きつけるようにお茶を置く。峯岸は一瞥もくれなかった。…こんなに棒読みな「どうも」を聞いたのは初めてだ。
 何故かじっとコップを見つめている峯岸を見て、違和感を感じる。……いや、いつも通りか?
 ジロジロと見ているからか、峯岸が不機嫌そうに何だよ、と問うた。そこでハッと気がつく。そうだ、いつも通りなんだ。田口や世津は怪我をしていたのに、峯岸はかすり傷一つない。

「…怪我してないんだな」
「ああ? あたりめーだろ。俺を誰だと思ってんだよ」
「卑怯な奴がいた、って…」
「田口が言ったのか? まあ、いたなそんな奴。鈍器持ってやがったから横にいた奴を盾にしてやったが」
「え……?」

 盾にした…?

「そ、それは、敵の奴だったのか…? そいつ、鈍器で殴られて平気だったのか?」
「知らねえよ。どうでもいい」

 それはどちらの質問に対する答えだったのか。両方じゃ、ないよな…?
 顔が強ばるのを感じた。峯岸はそんな俺を笑う。

「そういや、うちの制服を着ていたかもしれねえな」

 冷たい笑みに背筋がぞくりと震えた。