「蔦森、アッキーどうだった?」
「あいつ、すげー緊張しててさあ」
「え、そうなんですか?」

 俺はライ先輩の言葉に目を丸くする。緊張? 全然分からなかった。つか、あいつ緊張とかしないタイプだと…。

「その反応だと、うまくやったみたいだな」
「さすがアッキーな」

 にししと笑い合う先輩たち。……そう、だったのか。でも、國廣、教室の時と変わらなかったよな…? 付き合いが短いからわからなかったのだろうか。

「実はさ、蔦森」
「アッキーって結構人見知りなのよ」
「ええ!?」

 驚きの発言に目を見開く。え!? 人見知り!? あいつが?
 ライ先輩はチラリと扉を見て、にやっと笑った。

「まあ、それだけじゃねーけど」

 …え、何が?
 首を傾げてライ先輩を見たが、ぱっと表情を返ると、先程のメニューを取り出した。

「さて、何頼む?」
「え、いや…」

 これって絶対頼まないといけないのか? そんなことしたら俺、金なくなるんだけど。ただでさえ今月沢山漫画が発売されるっていうのに! それに、財布にあんまり金入ってなかった気がする…。
 どうしようと考えていると、俺の考えていることが分かったのか、セツ先輩がぽんぽんと頭を優しく叩く。

「大丈夫、金は取らないし」
「そうそ、好きなの頼めって」
「え」
「いきなりだったし、金持ってねーかなーと思ってたから元々取らないつもりだったんだ」
「ほい、メニュー」
「あ、ど、どうも…」

 …それなら、と思ってメニューを眺める。さっきはあまおうジュースだったな。好きなのと言われても、あんまり値段が高いものは頼みにくいし、また無難な値段のものにするかな。

「あ、じゃあ、これで」
「んー? 抹茶ビスケットぉ? え、そんなんでいいの?」

 そんなんって…。
 セツ先輩の言葉に苦笑いを浮かべながら頷く。何だか少し不満そうな顔をして、國廣の時と同じように声を上げる。…予想はしていたが、やはり高速で注文したものが出てきた。
 まあ、これも作ったものじゃないだろうから、あらかじめ準備しておいたんだろうな。