(side:戸田)

 社のメアドをゲットした。それはいいけど、何を書いたらいいんだろう。
 俺はうんうんと唸りながらベッドで頭を抱えていた。井手原くんに社のメアドを聞いたのはいいけど、その後が問題だった。メールを送るのは得意だけど、それは俺に少なからず好意を抱いている子に限ってであり、俺を嫌っているであろう社には通用しない。というか社相手にデコだらけのメールを送ったりなんかしたらキレそうだ。

「う、ううん…」

 どうしよう。とりあえずメアドを教えてもらったってことを書いた方がいいよね。あと、もう一回今までのことを謝って…それから…。

『戸田です。井手原くんからメアドを訊きました』

 ……き、気持ち悪いな、俺。
 書いては消し、書いては消しを繰り返す。書いている内に気持ち悪い俺らしくない文章に慣れてきて、訊きたいことも混ぜていく。これで話題が広がればいいな、なんて。逆にこれで返事が返ってこなかったらかなりショックだ。
 ドキドキしながらメールを送信して、ベッドに寝転がる。見慣れた天井を見つめながら、社の顔を思い出した。あの顔のこと、他に誰が知ってるんだろう。副会長とか会長は知らない…だろうなあ。あんなに格好良いのに、隠してるなんてもったいない。でも、隠して欲しいなんて思っている自分もいて混乱する。
 とりあえず、これからマサとして仕事を手伝ってくれるんだよね。…社には申し訳ないけど、凄く助かる。井手原くんにもホント感謝してるし。今は嫌われてるけど、仲良く出来たらいいなって思う。鳴らない携帯を見つめていると、段々瞼が重くなってきた。――返事、来るといいな。そう思いながら、俺は意識を手放した。