今まで仕事をサボってばかりだったから、仕事のやり方が分からない。青白い顔の戸田はそう言って項垂れた。呆れて言葉が出ない。完全に自業自得じゃないかと言えば、自覚があるのだろう、縮こまった。

「他の役員は」

 無駄だと思ったが、一応訊いてみると、一度顔を上げて、直ぐに顔を逸らした。

「……来てないよ」
「だろうな」

 は、と鼻で笑うと井手原が咎めるような目でこっちを見た。…俺が悪いってのか? 違うだろ、戸田は今まで同じことをしていたんだろ。責めて、何がいけないんだ。

「それで、俺に仕事をやれって?」

 蹲んで首を傾げると、目が揺らいだ。そして、小さく首を振る。

「社はもう役員じゃないし…今まで迷惑かけたから…。でも、仕事のやり方を、教えて欲しくて…」
「ふうん」

 俺の返しに、びくりと肩が震えた。惨めだな、と心の中で嘲笑う。あんなに煌びやかだった奴が、こうまでなるのか。
似たようなもんだろ、とは言わなかった。戸田が倒れようともこの学園がどうなろうともどうでもいい。ただ、高槻が疲れることに繋がるのは避けたい。

「ところで、何でお前だけ?」

 それともう一つ。どういう経緯でかは知らないが、仕事に復帰して、しかも必死に処理しようとしている。その点は見直した。だから少しは手伝ってやろうという気になった。

「社がいなくなって…最初は良かったんだ。でも、…気がついたら、周りからの視線が凄く冷めてるのに気づいて…。生徒会室に逃げ込んだら、未処理の書類が沢山積み上げられてて。俺、皆に言ったんだ。書記に任命された千聖にも。でも、誰も聞いてくれなかった」

 そして少し前までは自分もその中に入っていたのだと。その瞬間青ざめて、慌てて仕事に取り掛かったものの、何も分からなかった。仕事をしていると転入生に邪魔される。そういう日が何日も続き、結果こうなった。

「社、ほんとにごめん、ごめんじゃすまされないけど、俺――」
「……はー」

 戸田のうざったい謝罪を遮って深い溜息を吐くと、その横を通り過ぎる。ハッと息を呑む音がして、社、と震えた声が聞こえた。

「おい、仕事、すんだろ。んなとこでうだうだ言ってないで、早く来い」
「え……!」
 デスクに手を付いて振り返ると、立ち上がった戸田が、目を見開いてこっちを見た。