大丈夫かよ、と心配そうに言ってくる田口に頷いた。

「お前は?」

 訊ねると、俺が訊くとは思っていなかったのか、一瞬呆けた。そしてニッと笑う。

「俺らは街まで行く」

 ……ん? 俺ら?

「…因みに、何しに?」

 まさかと思いながら言うと、満面の笑みで喧嘩だと返された。……休日まで喧嘩とか、お前ら…。一般人の迷惑にならないようにしろよと溜息を吐くと、田口は胸を張って頷いた。




 田口が慌ただしく出て行ってから一時間後、スマホがぶるぶると震えだし、俺はスマホを手に取った。井手原からだ。今日はもう一人の書記であった立花だけが来ていると記されている。立花は図体だけは大きいが、小心者だった。面倒だったから相手をしなかったが、他の連中に比べたらまだ好感が持っている。いや、持っていた。あいつ、自分から歩み寄ろうとしなかったくせに、自分を分かってくれるのは転入生だけとか言いやがった。ふざけるなと言いたい。分かって貰いたいなら話しかけてこいよ。何も言わずに分かってくれなんて甘えたことを言うなってんだ。

「…ッチ」

 思い出して腹が立ったので舌打ちをして、立ち上がる。生徒会室にいるのが会長や副会長だったらまだ考え直したが、あいつならまだ大丈夫だ。もし見つかったら脅せばいい。
 井手原に今から行くという内容のメールを送り、部屋を出た。田口同様に他の奴らも出かけているのか、不気味なほどに静かだった。壁に描かれたある意味芸術的な模様を何となく眺めながら歩く。最初の内は清掃員が綺麗に消していたらしいが、一向にやめないのでもう諦めたらしい。
 寮を出ると、風が俺の髪を撫でた。少し風が冷たく感じ、早足で一般教室棟に向かう。周りがざわざわと騒がしくなってきて、顔を歪めた。あんまり目立ってしまっては生徒会室に行きにくい。…さて、どうするか。

「ねえ、恭佑。最近どこ行ってるの?」

 男にしては高めの声に、ピクリと反応する。静かに声のした方を向けば、――転入生がいた。その横には諸星がいて、朝合った時より顔が窶れているように感じた。じっと睨むように見ていると、諸星が不意にこっちを向く。バチリと視線が合って、諸星は目を見開いた。