パンコーナーでお目当ての物を発見して手に取る。その際、横に並んでいた物も一緒に取った。メロン味のパンとは一体どんなものなんだろうか。もしかして果肉が入っているのか? でもメロンが入っていてこの値段とは…。…よし、カレーパンは止めてこれを買おう。田口には…フレンチトーストでいいか。未だにあいつの好みが分かんねえけど問題なく食べれてるわけだしどんなんでも大丈夫だろ。
 レジまで持って行くと、花平さんは意外そうに俺の手元を見た。

「今日はメロンパンか」
「はい、ちょっと興味がありまして」
「ふうん?」

 何故か悪戯っ子のような笑みを浮かべると、バーコードを読み込んでいく。…え、このメロンパンに何かあるのか? 不味いのか? 少し不安になりながら財布を開けると、花平さんは思い出したように声を上げた。

「あ、そうそう。昨日世津くんが来たんだけどね。彼、社くんのことを楽しそうに話してくれたよ。仲、良いんだね?」
「はあ!?」

 有り得ない言葉に素っ頓狂な声が出る。俺の声に諸星が驚いたような顔をしてこっちを見た。花平さんも目を丸くする。

「違うのかい?」
「違います!」

 諸星のことで否定した時より強く言えば、少し詰まらなそうに口を尖らせて、なんだと漏らす。俺は引き攣った笑みを浮かべた。
 あいつと仲良くするくらいなら、まだ諸星の方がマシだ。
 …しかし、どういうつもりで花平さんに俺の話をしたんだ…? それも仲が良いと思わせるような…。顔を歪めかけて、感情を押し込める。

「じゃ、三六五円です」

 俺は小銭を置くと、チラリと諸星を見る。未だボーっと突っ立っていて、商品を選んでいる様子はない。何してんだこいつ。じっと見ていると、我に返った諸星と目が合った。慌てて商品棚を眺め始めた。

「うん、丁度だね」
「どうも」

 レジ袋を受け取って笑いかけると、出口に向かって歩き出す。待てよという声は聞こえなかったことにしよう。元々一緒に来るつもりなかったし。つかボーっとしてたのが悪い。ふ、と笑うとコンビニを後にした。