「食堂には来るなよ」
『ああ。目立つと誠春にも迷惑をかけてしまうからな』

 高槻がふ、と笑う。苦笑している姿が目に浮かんだ。

「来るなら放課後にしろ」

 そう言って電話を切った。ふうと息を吐くと、黙々と食べていた田口が顔を上げた。

「誰だったんだ?」
「言う必要ないだろ」

 突っぱねるとむっとする田口。「それはそうだけど」吐き捨てるように言った。何故か不機嫌になった奴に溜息を吐いて仕方なく電話の相手を告げた。

「知り合いだ。ちょっと過保護な」
「…来るとかなんとか言ってたけど、この学校の奴か?」
「まあな」
「ふーん」

 面白くなさそうに頬杖を付く田口に片眉を上げる。何だ、訊いといてその顔は。

「お前ちょっと嬉しそうだったから」
「……は?」
「電話してる時」
「まさか」
「マジだって」

 数日しか一緒に過ごしていない奴と昔からの知り合いを比べたらそりゃ態度は違うだろうけど、そこまで分かりやすかったか…? 俺は何だか少し恥ずかしくなって視線を逸らした。

「なあ、そいつどんなやつだよ」
「だから何でお前に…」
「お前が心を許してるって奴を知りたい。つーか、俺お前のこともっと知りてえんだよ」

 何を言っているんだと田口を見ると、真剣な顔でこっちを見つめている。かと思ったら、次の瞬間子犬のような顔になった。垂れた耳が見えたような気がして、パチパチと目を瞬く。…まあ、こいつ一人くらいならいいかと思い、苦笑した。

「放課後に来るからその時な」

 田口の顔が見る見るうちに輝き、俺は思わず噴き出した。