そういえば今日その教科書持ってきた気がする。

「俺はちゃんと持ってるよぉ」

 鞄の中を見れば、やっぱり入っていた。取り出して二人に見せると、唖然とした顔をしていた。

「…え、それ、本か?」

 確かめるように訊ねてきたたぐっちに首を傾げる。本じゃなかったら何だって言うんだろう。確かにちょっとボロボロだけどさあ。

「勿論本だよー」

 あっ。社クンが顔顰めた。

「…何があったんだ、その本に」

 何があったか、ねえ。俺は教科書を鞄に投げ入れてある日のことを思い出す。

「それがさあ、よく分からないんだよねぇ。気がついたらこうなってて〜」

 枕が無かったから代わりにそれで寝たら物凄く寝心地悪かったんだよね。まあいいかと思ってそのまま寝たら朝になって吃驚。ぐしゃぐしゃになってるんだもの。

「…キミ達! 静かにしないか!」

 えへへと笑っていたら聞こえたうざったい声。まだいたのあいつ。苛立ちを抑えきれなくてチッと舌打ちをする。社クンがじっと見ているのに気づいて慌てて笑みを貼り付けたけど…遅かったかな? 顔が強張っている。

「これだから落ちこぼれは――」
「あぁ!?」

 うわあ。そういうことフツー言っちゃう? 俺たちが不良ってこと忘れてるんじゃないの。確かに俺たちは落ちこぼれだけど――落ちこぼれだからこそ、そんなこと言われるとキレちゃうよ。

「テメェさっきなんつった! あぁ!?」
「…うっせぇな」

 騒ぎ出した奴らにもっとやれーと内心応援していると、峯くんがポツリと言葉を漏らした。

「す、すみません! 峯岸さん!」

 慌ててキレた奴らが頭を下げる。あーあ、やめちゃった。ツマンナイの。ふあ、と欠伸を漏らす。

「ッチ、失せろクズが」

 峯くんの言葉に情けない悲鳴を上げて出て行くセンコー。何度も転びそうになっていて、俺はブハッと笑い声を上げた。