(side:誠春)

 周りを睨みながら歩いている同室者の姿は、挙動不審とも言える姿で横を歩きたくなかった。そして、某一匹狼を思い出す。奴もこんなふうに周りを威嚇していた。
 何事もなく教室に到着した。しかし、中に入ってげ、と顔が歪む。真っピンクの机に足を乗せて峯岸が眉を寄せて目を瞑っている。その顔は不機嫌そうで、近寄りたくない。俺に続けて入ってきた同室者は意外そうな顔をした。

「峯岸さんが来てる…」

 もしかして峯岸が来るのは珍しいことなのか?
 自分の席に近づいて行くと、気配で分かったのか、峯岸の目が開いて視線が合った。ニタリと嫌な笑みを浮かべる。

「よォ、社クン」

 そして隣の同室者に視線を向ける。笑みが消え、鋭い視線が刺さって同室者は青褪めた。俺に向けられているものではないが、俺を挟んでいるのでまるで俺を睨んでいるように感じる。
 俺は先程の挨拶に答えずに席に着いた。同室者もガタリと音を鳴らして隣に座る。どうでもいいが、そこお前の席じゃねえだろ絶対。そこの席の奴来たらどうするんだ。…ま、こいつらってそんなこと気にしなそうだけど。
 今日はちゃんと教師が来るのかと心配になっていると、柳原が来た。それまで騒いでいた不良共はぴたりと話すのを止め、柳原を見る。不良の中には睨んでいる奴もいれば、少し怯えている奴もいる。

「出席取るぞ」

 そう言って名前を呼んでいく。意外だったのが、皆それにちゃんと答えていたことだ。てっきり無視するものだと思っていた俺は、目を丸くした。
 自分の名を呼ばれ返事をした直後、教室のドアが勢い良く開いた。

「おっはよ〜」

 げっ。
 峯岸を見た時より顔が歪んだなと自分でも分かった。昨日教室に来なかったから今日も来ないかもしれないと思っていたのに。

「遅刻だぞ」
「こんくらいいーじゃん。見逃してよ」

 へらへらと笑みを浮かべる世津に席に座れと溜息混じりに促した。はあいとだらし無い返事をした世津がこっちを向く。俺、同室者、そして峯岸という順に見た後にんまりと浮かべた笑みに嫌な予感しかしなかった。