翌日、どうせまだ寝てるんだろうなと思って自室から出ると、ソファに座っている同室者が視界に入り瞠目した。

「おっす」

 いや、おっすじゃねえよ。何で起きてんだ? 俺の驚いている様子を見て何を思ったのか、ニッと歯を見せて笑った。

「今日は一緒に行くからな!」
「はあ?」

 …何だって?
 顔を顰めて同室者を見るが、全く気にした様子もなく笑顔を浮かべている。

「峯岸さんがいつ心変わりするかわかんねーし、他の奴らも手を出してこないとは限らないからな、俺がお前を守ってやる」

 守ってやる、だなんて男から言われても全く嬉しくない。いや女から言われても嫌だけど。俺は守ってやると女に言う側だ。
 …しかし、まあ喧嘩ができないことは確かなので、ボロ雑巾のようにされる可能性はある。ここは素直に好意を受け取っておいた方がいいんだろう。

「いらねえ」

 まあそう思っても俺の口は正反対のことを言っているのだけど。やっぱプライドが邪魔して…な。

「お前が嫌がっても付いていく」

 同室者の言葉にむず痒くなる。俺はフンと鼻を鳴らし、洗面所に向かった。緩みそうになった口元を見られたくなかった。




 Zクラスに台所は備わってないようだ。普通の生徒は簡易台所、生徒会や風紀、教員などは最新の台所設備が導入されている。どちらにせよ、料理をしない俺からすると台所がどんなんだっていいし、なくてもいい。朝食は寮内のコンビニで色々買っていた。この寮にもコンビニはあるんだろうけど、溜まり場になってそうで何となく行くのは憚られる。つーか格好の獲物だな。
 で、ここでの朝食はどうするのかと言うと、同室者が買いに行くことになった。いや、別にパシったわけじゃねえよ? 向こうが自分からやるって言い出したんだから。
 朝のニュースを見ながら同室者の帰りを待った。何故かボリュームたっぷりの商品ばかりで俺は目を吊り上げる。

「朝からんなもん食えるかよ」
「え? マジかよ、小食すぎね?」

 目を丸くする同室者に唖然とする。このカツサンドや特大カレーパンなどを朝食に…? 無理だ、絶対入らねえよ。
 首を振って拒否しようと思ったが、折角買ってきた物を押し返すもの酷いだろう。…俺は仕方なく特大カレーパンを受け取った。