(side:誠春)

 夕飯にしつこく誘ってくる同室者を部屋から追い出し、俺はベッドに寝転がった。
 何事もなく一日が終わり、逆に俺は薄気味悪さを感じている。峯岸も世津もいなかったが、探るような目をずっと向けられて疲れた。同室者が守ってくれてるのか知らねえが、威嚇するように周りを睨んで、結局誰も話しかけて来なかった。
 いや、それは良い。寧ろそれで良かったと思っている。だが、嫌われ者の俺が、しかも不良たちからあまり良く思われてなさそうな生徒会から落ちてきた奴に何も仕掛けてこないというのは…。思い過ごしなら、それでいいんだけど。
 ふうと溜息を吐いて天井を見上げていると、スマホがブルブルと震えだす。スマホを取って見てみると高槻という名が表示されていた。通話ボタンを押して耳に当てる。

『もしもし――誠春、今、いいか?』
「ああ、別に構わねえ」

 と言ったところで、高槻――俺に協力してくれていた奴だ――の声が疲れているということに気づく。俺は少し疑問に思ったが、そのまま先を促した。

「どうした?」
『…悪かった』

 は? 突然の謝罪に顔を顰めた。何か謝られるようなことをされただろうか。

「もしかして、リコールのことか?」
『…それもある』
「他には?」
『直ぐに連絡できなかったことと、……あいつらに何の罰も与えられなかったことだ』

 俺は高槻の言葉に黙る。あいつらってのは生徒会の奴らか。フンと鼻を鳴らして笑う。

「気にしちゃあいねえよ。あんな奴らどうでもいいしな」
『でも、誠春が八代家の者ということをバラして素顔を晒せば――お前は、そこにいる必要ないんだぞ』

 何故か焦っている高槻に確かにそうだろうなと思ったが、…果たして俺が素性を明かしたところであいつらが改心するか? とも思う。つかもうあんなクズだらけの奴らんとこ戻りたくねっつー気持ちが大きい。Zクラスだってクズの溜まり場みてーなもんだけど。

「もういいんだよ。お前も俺のこと気にせず毎日を楽しめよ」
『楽しめって…俺は、お前が心配で』
「親父に頼まれたか? 俺から断っとくから気にすんな。じゃあな」
『ちがっ――』

 会話をすることが怠くなって早口にそう告げると通話を切った。まだ何か言っていたような気がするけど、別にいいか。
 スマホを横に置いて、深い溜息を吐いた。