「お、おい…どうした?」

 いきなりがっつき始めた俺を唖然として見てくる。俺は頬張りながら睨むように見て飲み込んでから早口で告げた。

「早く食べて出るぞ」
「はっ? 何で――」

 戸惑っている同室者を無視し、最後の唐揚げを食べ終わった。健康に悪いし行儀も悪いが仕方ない。俺は手も合わさずに立ち上がった。

「えっ、ちょ」

 チラリと見ると、まだ残っている。…置いていくか。無言でそのまま歩いていくと、焦ったような声が後ろから掛けられた。

「すぐ食べ終わるから入口で待っとけよ、社!」

 振り返ると、凄い勢いで飯を掻き込んでいる同室者。はいはいと心の中で返事をして前を向いて――固まった。

「……社?」

 元一匹狼が目を見開いて俺を頭から爪先まで見た。…ッチ、あいつが名前呼びやがるからバレたじゃねえか。つか近くまで来てたんだな、こいつ。

「お前――社、なのか」

 依然と驚いたまま俺を凝視してくる奴に舌打ちを一つ残し、横を通り過ぎる。後ろから追ってくる気配はしなかったので少し安心してスピードを上げて歩を進める。背中に突き刺さる視線には気づかないフリをした。




 入口を出て壁に寄りかかると、続けて出てきた人物を見て顔を顰める。向こうも笑顔を潜めて無表情で俺を見てきた。

「…んだよ」
「……別に〜?」

 へら、と取り繕うように笑顔を浮かべ、更に奴の印象が悪くなる。何で関わりたくないって思う奴ばっか近づいてくんだよ。

「俺ね、世津涼っていうんだー。一応キミと同じクラスだよ」

 だからなんだよ。自己紹介とかして貰わなくても構わない。

「あっそ」
「キミは社定春くんだよねー?」
「ああ」
「社くんってさあ、生徒会にいたんでしょ」

 生徒会という言葉を聞いて世津を睨みつけた。顔は笑っているが、目が仄暗い色を宿して俺を睨みつけている。

「そこにさあ、戸田って奴いるよね」

 ――戸田。チャラ男会計の名前だ。何故こいつからあいつの名前が出る? 俺は姿勢を正して世津を見た。にんまりと弧を描いた口から言葉が発せられそうになった瞬間。

「悪い! 待たせたな――って、あ? 世津じゃねえか」

 同室者が慌ただしく食堂から出てきた。