結局教師が来ないまま昼休みの時間に突入した。授業がない所為でずっと昼休みみたいな雰囲気だったが、時計では腹が空腹を訴える時間を差している。同室者から聞いたが、どうやらちゃんと来る教師は柳原ぐらいらしい。もう他の奴ら教師止めろよと言いたい。職務怠慢じゃねえか。
 それにしても、不良クラスだからもっと煩いと思ったが、……静かだな。原因は間違いなく峯岸だろう。如何にも煩いのが嫌いですという顔をしているしな。峯岸が手を出さない上に隣のアホ(同室者)が親しげに話しかけているから周りも俺に手を出せないようだ。突き刺さる視線は感じるが全く怪我をせずに昼を迎えれた。峯岸と同室者がいなかったらどうなっていたかなんて想像もしたくねえ。
 しかし、こいつら昼飯行かねえのか? 立ち上がってガタリと音を立てると更に視線が集まった。やっぱり視線うぜぇな…って、あれ? 待てよ。今まで使ってた食堂ってまさか…使えない? 俺こいつらが普段使ってる食堂はおろか売店の場所すらも知らねえんだけど。でも立ち上がってもう一度座るなんてアホなことしたくないし。どうしようか。

「どうした、社? あ、もしかして昼飯か? 一緒に行こうぜ」

 内心慌てる俺に救いの手が差し伸べられた。お前…物好きだしアホだしアホだしアホだけど…いい奴だな。俺は直ぐに頷くと、同室者はぽかんと間抜けな顔を晒した。自分が誘っといてその反応は何だ。

「んだよ」
「いや、断られると思ってたから…。よし、行くか!」

 何故そんなに嬉しそうな顔をするのか分からないが、勢い良く立ち上がった同室者はにこにこと笑みを浮かべる。周りからも昼飯食いに行くかという言葉が聞こえてくる。俺たちはその言葉と強い視線を受けながら教室を後にした。





 食堂は思っていたより近くにあった。中は人で溢れ返っていて、空いている席が中々見つからない。仕方なく空くまで待つことにし、入口の横に突っ立っていると、食堂に入ってきたチャラそうな奴が同室者を見て近づいてきた。…生徒会のチャラい会計を思い出し思わず眉を顰めた。こういう奴は、総じて面倒だ。

「あれ〜? たぐっちじゃん」
「よう、世津。今席空いてねえぞ」
「みたいだねー。ところでこの子誰?」

 俺を見て胡散臭い笑みを浮かべる。溜息を吐きたくなった。やっとあのウゼェ会計から解放されたのにまたウザそうな奴に会ってしまった。この胡散臭い笑みを見ると腹が立つ。

「俺の同室者の社定春だ」
「同室者の社定春…あー! 生徒会からクラス落ちした例の嫌われ者クンね!」
「お、おい、世津!」

 世津と呼ばれた男の大声に反応した奴らが俺を睨み出す。敵意のある視線や罵倒に、にんまりと目の前の奴が笑んだ。これで俺が傷つくと思ったら大間違いだぞ。俺は鼻で笑うと、視界の端に写った空席に向かって歩き出す。

「ちょ、待てよ! あ、じゃあな、世津」

 世津って奴と食べればいいのに。俺は慌てて付いてきた同室者を見て思った。