一気に脱力した。なんつーか、ここまでくると相手にされてない金髪が哀れに思えてくるな。金髪は顔を真っ赤にすると、わなわな震えだし、拳を振り上げた。殴られる――そう思った瞬間、銀髪はすっと目を細くして拳を避けると、胸倉を掴んでいた金髪の手首を掴み、鳩尾に膝を入れた。

「ぐっ……!」

 金髪は顔を歪め、手を放してよろめいた。

「うっぜーんだよ、テメェら」
「っんだとテメェ!」
状況分かってんのかよ!」

 初めて銀髪が口を開く。心底嫌そうな顔をしているそいつに心の中で同意した。確かにこいつら、うぜぇ。特に声が。
 つーか、いつになったら通れるんだよこれ…。早くこいつら伸してくんねえかな。こんだけ余裕な態度してんだ、あの銀髪はやり手に違いない。いや、知んねえけど。勘だ。
 早くしろと念を送っていると、ギャアギャア騒いでいる小物臭プンプンな奴らから視線を外した銀髪が何故か急にこっちを見て、バッチリ目が合った。何も悪いことはしてないが、ギクリとして一歩後退りした。じっとこっちを見つめてくる視線を負けじと睨み返す。その時間は、長くは続かなかった。雑魚共が銀髪に一斉に襲いかかったからである。流石に一斉にはやばくねえかと少しヒヤヒヤしたが、それは杞憂に終わった。拳が当たるというところでするりと集団から抜け出し、目標を失った集団は仲間の拳が当たったりぶつかって倒れこんだりして自滅してしまった。…ほ〜。参考にさせて貰おう。今後の為に。しかしこれだけだと直ぐに起き上がってしまうだろう。とことん潰すのだろうかと観察していると、再び銀髪がこっちを向く。何故か嫌な予感がして頬を引き攣らせていると、銀髪が俺の方に走ってきた。う、げえええええ…! 銀髪の後ろで雑魚共が凶悪な顔付きで起き上がるのが見えて、更に俺の顔が歪む。
 ――いや、あいつらは元々銀髪が目的だ。俺は雑魚共とすれ違うようにして向こうに行けばいいじゃねえか。俺は銀髪を無視して通り過ぎようと走り出す。しかし、そう上手くいかなかった。銀髪がすれ違いざまに俺の手首を掴んでどこかへ連れて行こうとする。

「ちょ、何やってんだ手ェ放しやがれ!」

 俺は手をぶんぶんと振って抵抗しながら怒鳴るが、反応がない。
 何で俺まで連れて行くんだよこいつ! ふざけんな!