(side:淳也)

 俺は今、かつてないほどの屈辱感を味わっている。ぐしゃ、と紙を握りつぶして舌打ちをした。

「あ、あのさ淳也…気にすることないって」

 翔太が俺を気遣うように肩を叩く。翔太には申し訳ないが、それだけじゃあ俺の怒りは収まらない。
 掲示板に掲載されていた紙に書かれてあったのは、俺とクソ会長のことだった。それだけでも、はあ? となるのに、それ以上に意味不明なことが書かれてあったのだ。俺が倒れたということは、まあ別にいい。別に倒れたぐらいで記事にすんなよと思ったが。しかし、クソ会長が俺をお姫様抱っこっつーのは一体何だよ! 実は付き合っている!? 誰があんなクソ会長と付き合うか!

「じゅ、淳也。顔が凄いことになってるから! 人殺しそうな顔になってるって!」

 翔太の慌てた声が耳に入ったが、相手にする余裕はない。
 ――おかしいとは思ったんだ。あのクソ会長が俺を心配、してるだなんて。あいつは絶対嫌がらせであんあことしやがったんだ…! 知恵熱ごときで倒れた自分が恨めしい。
 ……つーか、さっきからキャアキャア周りが煩くて仕方ない。親衛隊持ちの誰かが近づいてきているのか、声は段々と大きくなる。チッと再び舌打ちをした時、ずしりと肩に重みが加わる。誰だよ、と勢い良く振り返って睨めば、そいつはクソ会長だった。目は更に鋭くなる。

「おいおい、すげー顔してんなあ、犬」

 ぶはっと噴き出すクソ会長に力一杯握った拳を振り上げる。おっと、なんて言って軽く俺の拳を避けたクソ会長は、ニヤニヤとした表情を収めようとしない。つーか気安く触んじゃねえ! 肩に乗った腕を振り払う。

「倒れたお前を運んでやった優しい生徒会長様になんて態度だよ」
「誰が優しい、だ…! フザけた真似しやがって!」

 べし、と丸まったぐしゃぐしゃの紙を投げると、紙を開いて、ああ、と頷いた。

「これで怒ってるわけか。どうだ、気分は?」
「最悪だ」
「だろうな」

 クソ会長は鼻で笑う。俺はそれをギロリと睨んだ。

「お前は揶揄い甲斐がある。だからこの俺が態々お前なんかを運んでやったわけだ」

 そう言われた瞬間、何故か心臓がずきりと音を立てた。