(side:日向)

 淳ちゃんが倒れたって聞いて、俺は急いで保健室に向かった。その途中で、空音くんに会った。

「淳也が熱出すなんてな。あいつ確か体強かったよな?」
「うん、淳ちゃんが体調崩すなんて滅多にないよ」

 だから、心配なんだよね。俺の顔を見て、空音くんが苦笑する。

「お前のそんな顔、初めて見たかもしれない」
「え〜? そう?」
「どっちかと言うと、淳也が心配してるからな」

 確かに俺は淳ちゃんに迷惑かけてばっかりだけど。俺はむっとして空音くんをじっとりと睨む。

「俺は毎日淳ちゃんのこと色んな意味で心配してるんだからね」
「…は?」

 色んな意味? と不思議そうな顔で首を傾げる空音くんを無視し、俺は保健室へ足を進める。

「え、何。どういうことだよ、おい。ちょっと」

 訳が分からなさそうな空音くんに笑みを浮かべる。俺が淳ちゃんのこと恋愛対象で好きって言ったらどういう反応するかな。きっと空音くんは、驚きながらも賛成してくれるんじゃないかな。だから、淳ちゃんと付き合ったら空音くんに一番に報告したいな、なんて考えながらどんどん足を進めていくと、保健室に着いた。



「お、淳也寝てる」
「ホントだ〜」

 淳ちゃんの寝顔に俺は笑顔になった。もう、可愛すぎる。このまま抱き潰しちゃいたい。ていうか閉じ込めて俺のものにしちゃいたい。
 えへへと笑っていると、空音くんが顔を引き攣らせて俺を見た。

「何不気味な顔してんだよ、お前」

 失礼だなあ、もう。頬を膨らませてみると、益々引いた顔になった。あららぁ、失敗。…ま、別にいいんだけどね。淳ちゃん以外の人にどう思われようと。
 じいっと淳ちゃんの寝顔を見つめる。段々顔を近づけていくと、空音くんが慌てたような声を上げる。

「近い近い近い! それ口当たっちゃうから!」

 当てる気でいるの。心の中で答えながら、更に近づけると、淳ちゃんがパチリと目を開く。あ、起きちゃった。そう思った瞬間、顔を鷲掴みされた。

「ぐえっ」

 変な声が漏れる。隣で空音くんが噴き出す音が聞こえてムカッとした。