(side:圭)

「はー、漸く終わったか!」
「疲れたわー」
「……って、二人とも始まってから終わりまでずっと寝てたじゃん…」

 俺は二人をジト目で見るけど、二人は明後日の方を向いていた。まあ確かに退屈だったけどさ。校長先生の話長かったし。というか、途中から話よりもズレた鬘の方が気になって仕方なかったんだけど。
 再び戻ってきた教室で、今は担任の先生――松林というらしい――の話を聞いているところ……なんだけど。

「なあ、圭。帰りどっか寄らね?」
「あ、あのー」
「おー、いいね。どこ行く?」
「お前には言ってねえ」
「え、えーと、君たち?」

 ……二人とも、先生の声聞こえてるよな? 前向いてあげようよ…。あ、先生が助けを求めるような顔で俺を見てる。俺は今後の予定を話している二人に、取り敢えず一端話をやめさせようと口を開いた。

「アッキー、一樹くん、その話は後でしようよ」
「…ま、時間あるしいいか」

 って、あっさりと話やめるのか! チラリと先生を見ると、ぐっと親指を立てていた。イラっとした。
 漸く進んだ先生の話を聞き流していると、携帯がポケットの中で震えた。先生を一瞥し、目を盗んでポケットから携帯を取り出した。ピカピカとランプが光っている。開くと、今日知ったばかりのアドレス――吉原先輩から着信が入っていた。どうしたんだろう、そう考えている間にまた震え始める。しかし、今取るわけにもいけない。胸騒ぎがしながら、携帯をポケットに仕舞い込む。




 電話をかけると、コール音が長く続かないうちに電話が繋がる。

『あ、岡崎くん!?』
「はい。…どうしたんですか?」

 何だか声が小さい。首を傾げると、更に声を潜めた吉原先輩が、何やら深刻そうな声で話し始める。

『…実は、さっき尚史が来てさぁ。あ、今はフラッとどっか行ってるんだけどね。岡崎くんのことはバレてないけど、俺が何かを隠してるの感づいちゃったみたいで』
「え――」

 息を飲む。夕凪先輩が、この校舎のどこかに…?

『だから、気をつけ――…やば、戻ってきた。ごめん、切るな!』
「え、あ」

ブチッと音を立てて切れる電話。電話を持ったまま俺は、アッキーが声をかけてくるまで呆然と立ち尽くしていた。