晃生くんはそれでさ、と話を続ける。

「いきなりグレた俺を周りは凄い目で見てきてさ。怒られたけど、意地でも元に戻さなかったよ。そしたら今度は、浮いたってわけ。でも、俺を引き取ってくれて笑顔で受け入れてくれた母方の祖母ちゃんは何も言わないでくれた」

 そのお祖母ちゃんを思い出しているのか、晃生くんの顔が弛む。けど、直ぐに顔を顰めて舌打ちをした。

「周りは俺を腫れ物扱い。俺も何も言わない。そんな日が何年も続いてて…。六年の時、祖母ちゃんが突然倒れてそのまま逝っちまった。いよいよ一人になった俺は、いつもは気にしなかった陰口にキレて暴力事件を起こしたんだ」
「陰口…」

 僕は胸がツキリと痛んだ。僕も言われ慣れているだけに、その辛さが分かる。僕の場合は、ただ耐えていただけだけど。

「あいつは親がいないとか、親も嫌な奴だったんだろうとか、そんなん。あん時は自分の気持ちの整理が出来てなかったから、抑えられなかった。悪口を言ったあいつより、手を出した俺の方が圧倒的に悪い。つーか、どっちにしろ俺が悪者だって皆決め付けるんだろうけど」
「晃生くん…」
「なんだよ、んな顔すんなって。でも、俺後悔してないぜ。スッキリしたし」

 笑う晃生くんの顔には、確かに後悔は浮かんでなかった。僕はホッとして息を吐く。

「で、ここに来た理由に戻るけど。実は祖母ちゃんの親友ってのが、横島の……あー、と…お前の祖母ちゃんなんだよ」
「えっ!?」

 横島はお祖母ちゃんの苗字だ。まさかそういう繋がりだったなんて。僕は目を丸くして晃生くんを見る。

「横島の婆さんから連絡があって、こっちに来ないかって言われた。元々あんな所に未練なんてなかったし、いや、あったといえば祖母ちゃんと住んでたアパートなんだけど、あそこにいても駄目になっちまうと思って承諾した。……横島の婆さん、俺のこときかん坊って言ってなかったか?」
「あ、…そういえば」
「俺、こっちに来て好き放題してたからなー。今みたいに畑で作物育てるより、寧ろ荒らしてた。あとチビども良く泣かしてた」
「えっ!」

 衝撃の事実だ。晃生くん、大人びた性格してるな、って思ってたから余計に。