北海道に来て一日が経った。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんは相変わらず皺くちゃの顔を弛ませて僕を見ていた。僕は少し恥ずかしく思いながらプチトマトを口にする。噛んだ瞬間、甘い汁が弾けて口いっぱいに広がる。吃驚した。こんなに甘くて瑞々しいトマトを食べたのは初めてだ。

「……美味しいだろう?」
「あ、はい…」

 そんなに美味しそうな顔をしていただろうか? お祖母ちゃんは更に深く笑みを刻んだ。

「それはきかん坊が育てたトマトだべさ」
「きかん坊……あ、えっと…木島くん、のことですか」

 あの人がこんなに美味しいトマトを? 僕はまじまじとプチトマトを見つめた。プチトマトと木島くん。二つ一緒に脳裏に浮かべて、似合わない組み合わせなはずなのに、不思議と納得できる自分がいた。




 朝食を食べた後、木島くんがひょっこりと顔を出して僕を強制的に外へ連れ出した。僕はわたわたと挙動不審な動きになってしまったけど、木島くんはケラケラとおかしそうに笑うだけだった。

「あの…僕といて、楽しい?」

 おずおずと問うと、何言ってんだとばかりに眉を顰められる。

「俺が楽しくない奴と一緒にいると思うか?」
「でも、僕こんなだしっ…」
「確かにお前のその喋り方とかイライラするけど、別にお前自身が嫌いなわけじゃねーよ」

 イライラするという言葉で落ち込んだけど、嫌いじゃないと言われて目を丸くする。木島くんははっきり言う人のようだから、社交辞令のようなものではないのだろう。嬉しすぎて涙が出た。

「お前簡単に泣くなよ! 男だろーが!」
「ぃっ!? いひゃ…!」

 両頬を強く引っ張られて、痛みに余計に涙が出てくる。いくら肉付きが良くても引っ張られると痛いんだよ!

「ッチ。だから泣くなって。…あー、痛かったなら謝るから。ごめん」
「い、いや…僕も、ごめん」
「何でお前が謝んの? まあいいや。ここらへんで俺と近い年の奴、お前だけだからさ、ちょっと浮かれてた」
「えっ?」

 そうなの? え、じゃあ…学校は? 僕、一応転校したことになってるんだけど…。