※北海道の方言を実際使ったことも聞いたこともなく、ゲーム内での会話やネットで調べた知識をたよりに書いてます。
間違っている所や変な部分もあると思いますので、ご注意ください。

「……というような、ことが…えっと、ありまして、」

 僕は事のあらましを辿たどしく話し終えてふうと息を吐く。こんなに人と喋ったのは家族以外では初めてかもしれない。しんとした部屋の外では、そよそよと靡く草木や風鈴の音によって和やかな田舎の風景だけど、部屋の中は酷く居心地が悪かった。

「ぁの、……」

 目の前の少年から強い視線を感じる。僕は耐え切れなくなって縮こまってびくびくと反応を窺った。
 僕がどうしてこの少年に今まで合ったことを話したのか。事の始まりはほんの数時間前に遡る――。



 お爺ちゃんの家は北海道の田舎にあって、遠いからと遊びに行くことはなかった。初めて地元を離れる僕の背中を 一体どんな気持ちで押してくれたのだろう。農家であるお爺ちゃんの家の庭には立派な畑があって、目を丸くする。近くには牧場もある。なんだか、同じ地球に住んでいるのにまるで違う世界に入り込んだような気持ちだった。

「よう来たなぁ。ここさなまれ」
「ど、どうも」

 ニコニコと笑っていることにより祖父母に歓迎されていることは分かったけれど、日本語…というか、方言が分からない。

「ちょいとお爺さん、きかん坊連れてきてくれないかい?」
「おお。したら行ってくるべや」

 のんびりとした話し方と訛っているお陰で、柔和な 雰囲気が伝わってきた。ところで。きかん坊とは…話の流れからするに、もしかして誰かを僕に会わせる気なのだろうか。僕は青ざめて下を向く。ぎゅっと握り締めた手は汗で濡れている。

「婆さん、何か用?」

 突然の声にびくりと体が震える。咄嗟に見ると、少し幼さの残る顔立ちをしているけど金髪に赤メッシュが入ってて、しかも耳からピアスが沢山垂れている。田舎の素朴さに似合わない、派手な見た目だった。でも、長めの髪は一つに纏められて、服装は地味な――泥塗れの作業着で、それがまた不格好だった。
 でも、と僕は同い年くらいの少年を見る。夕凪先輩の肉食獣のような鋭さはないけど、格好良い。しかし不良に嫌な思い出がある上に元々人付き合いが苦手だから、目を合わせるなんてできない。

「…誰こいつ」

 どう考えても歓迎している顔ではない。僕は俯いた。

「内地から来た子だべさ」
「…あぁ、親戚の。ふーん」

 内地? 僕はその言葉に顔を上げる。すると、品定めするような視線とバッチリ合ってしまった。緊張からか、目が離せない。

「お……いってぇ!?」
「おばんでしたー!」
「おばんですー!」

 何かを言おうとした少年の背中に何かが突撃してきた。背中からひょっこり顔を覗かせたのは小さな子供二人だった。女の子と男の子の顔はそっくりで、双子だということが窺えた。

「やぁ、よう来たなぁ」
「なぁなぁ、コレが内地から来た奴っしょ?」
「あたし愛美でこっちが勝海! 兄ちゃん名前はー?」
「えっ? あ、あ、えっと、岡崎、圭…」

 双子の純真無垢なキラキラとした視線に自然と体が後退りする。子供相手だというのに、こんなにも吃ってしまった。