「なんで君はそんな言い方をっ…! 家に帰れなかったらどうなるか分かってるのか!」
「まあ、勘当されたとなりゃ、一気にこの学校に居づらくなるだろうな。一人で生きていくために働かにゃならねーし」
「う、うう…だよね……やっぱり僕なんて…」
「一気に落ち込むなよ…。何か俺が悪いみたいじゃねーか…」

 がしがしと頭を掻いて溜息を吐く不良。僕は俯いて涙目になる。僕は一体どうやって生きていけばいいんだろう…。
 自分の手をぼんやりと見つめていると、頭に何かが乗る。ハッとして顔を上げると、不良が僕の頭に手を乗せてぽんぽんと叩いていた。吃驚して思わずまじまじと見つめる。

「取り敢えず、親とちゃんと話してみろよ。あと仕事な。評価を落とした分、上げるのは今まで以上に大変だろうけど、諦めるよりは何倍もマシだろ」

 お前次第だけど、と付け加えてニヤ、と笑う。兄がいたらこんな感じなんだろうか。僕はぶわっと涙を溢れさせ、不良――中村くんの体に勢い良く抱き着く。

「うおっ!? な、何しやがる!」

 驚いたようで、声が裏返っていたが、諦めたように震える背中を撫でてくれた。



 中村くんは制服を見て顔を顰める。

「…べちょべちょじゃねえか…」
「ご…ごめん…」

 申し訳なさでいっぱいで、ベンチの上で正座する。あと恥ずかしいというかなんというか…。子供みたいに大泣きしてしまった。
 それにしても、今更だけど、僕はどうして彼にこんな話をしてしまったんだろう。結果的に良かったんだろうとは思うけど。

「僕、ちゃんと仕事するよ」
「当たり前だ。あ、あと生徒会室行ったら空音に一発もしくは数発殴られると思うぜ」
「えっ…!」

 い、いや…でも、空音には本当に迷惑をかけてしまったわけだし、それくらいしてもらわないと逆に僕も気まずいしね。
 真剣な顔をして頷くと、中村くんが一瞬驚いたように目を見開いて、笑った。

「いい顔つきになったじゃん」

 何だか認められたような気がして、胸が熱くなる。僕は感謝を込めて笑い返した。