「それで?」
『は?』
「いや、何で俺に電話して欲しかったのかな、と」
『そそそそそんなん言えるわけねえだろうが!』

 言えない理由がよく分かんねえんだけど…。まあ、言いたくないなら仕方ないけど、何か用事でもあったんじゃないのか?

『…お前さあ、やっぱりあいつとベッタリなわけ?』

 やけに真剣な声で言う幹太に、首を傾げる。あいつってのは戸叶のことで間違いないだろう。

「ベッタリ…ではないな。あいつが危険な目に遭わないように接触は控えてる」
『そっか…。あー、くそ、でもいいなあ…。俺もそっち行きたかったわ』
「そんなにここに行きたかったのか」
『そこに行きたかったっつーか、お前がいるから…』
「俺がいるから? お前、本当に俺のこと好きだな」

 笑いながら揶揄うと、何故か焦ったような声で凄い否定をされた。別にそんなに照れることねーのに。

「お前がいたら楽しいんだろうな…」
『だ、だろ?』

 へへ、と笑う幹太に笑い返す。幹太は弄り甲斐があるからな。今は戸叶とも大っぴらに会うこともできないし、空音は生徒会で忙しいし、実質ちゃんと会話できてる友達っていうと、翔太くらいしかいないし…。悲しくなってきた。

『絶対夏休み帰ってこいよ!』
「え? ああ、分かってるよ。遊ぼうな」

 それから暫く話をして、電話を切る。

「…随分楽しそうでしたね」
「!? な、…」

 俺はすぐ近くで声が聞こえたことに吃驚して横を見ると、クソ副会長が座っていて、目を見開く。な、何でクソ副会長がここにいる!? つーかいつからいた!?
 いや、それも凄く気になるところだが、クソ副会長は俺を睨まず、落ち込んだ様子で体操座りしているのも気になる。ベンチの上で体操座りって結構キツくないか? というか体操座り似合わねーな。

「…はぁ…」
「……?」
「…はぁー」

 え…? 俺は様子のおかしいクソ副会長を眉を顰めて見る。

「はぁあぁぁ」
「さっきからうっせえ! 何だよ! 溜息吐くなら別のところで吐け!」

 あまりにもウザくて怒鳴ると、俺を半目で見て、ぶわっと目に涙を溜めた。俺はぎょっとしてそれを見る。

「どうせ…どうせ僕なんて君の言うとおり生まれてきたことが間違ってるくらい愚かな人間だよ…」
「い、いや…俺別にそんなこと言って…」
「僕なんて死んだほうがいいんだ!」
「ええええ! ちょ、落ち着け! つーか色々大丈夫か!? 人格変わってんぞ!」

 一人称は確か私だった筈だし、敬語もなくなっている。一体何があってこんなことに…?
 面倒そうな雰囲気に、俺はげんなりと溜息を吐いた。