(side:淳也)

「…凄いモン食べてるな」

 空音が翔太の朝食を見て顔を引き攣らせる。今日は味噌汁に米とポテトサラダを混ぜ合わせたものを食べている。俺は少し耐性ができているが、空音は初めて見るから強烈だっただろう。顔が真っ青になっている。

「あ、美味しいですよ。一口どうですか?」
「……遠慮しておきます」

 無表情で言い放つ空音に、翔太は眉を下げる。嫌われていると思っているのか、苦手意識を持っているのか。こいつは基本的に仲良くなるまでは表情変えないやつだから、気にすることなんてないんだけどな。
 つーか、翔太、それ人に勧めんじゃねえよ。見た目もすげえグロテスクだし、味も……想像したくない。

「そういやな、幹太がお前から連絡がないって怒ってたぞ」

 くすりと笑った空音に、俺たちを見ていた生徒が目を見開く。…まあ、付き合いの浅い奴らなら、この表情は珍しいのかも。或いは、本当に友達だったんだという声も聞こえるから、それに驚いているやつもいるかもしれないな。

「え、幹太が?」

 幹太というのは、前述した悪友の一人だ。なんでまた空音にそんなこと言ってるんだ。直接言えよ。

「かんた?」
「中学んときのダチ」
「あ、なるほど…。あれ、っていうことは、書記さんと淳也って同中?」
「まあな」

 近くにいた生徒がえっと声を漏らす。チラリと見ると慌てて顔を逸らされたが。……顔が赤いのは気にしないでおこう…。

「いいなあ、中学の時の友達はバラバラに散ったんだよね、俺」

 ま、新しい友達出来たからここに来たことは悔いてないけど、と笑う翔太に笑みが零れる。

「で、話戻すけど、いい加減連絡してやれよ。寝不足の上にあいつからの愚痴で参ってんだよ」
「あー…良く分かんねえけど、連絡するわ」

 思わず空音に同情の視線。電話したら、人に迷惑をかけるなと言っておかないとな。

「じゃ、俺そろそろ行くから」

 人も増えてきたところで、空の皿を持って空音が立ち上がる。ひらひらと振ってくるので振り返していたら、食堂の入口にいた奴と目が合った。