チッチッチッチ…。時計の音だけが部屋を支配する。俺もクソ会長も黙ったままだ。クソ会長が俺を馬鹿にするようなことを言ってくると身構えていたのだが、何だか拍子抜けした。折角出した茶も、あんまり飲まれていない。腕組みをして何かをずっと考え込んでいる。まあ俺はそれならそれでいいんだ。でも空気が重いっつーか…。早く翔太が帰ってきて欲しくないと思う反面、帰ってきて欲しいと思っているのも事実。因みに翔太がどこに行っているのかと言えば、図書館だ。本を読んでくると言って出て行ったから暫くは帰って来ないと思う。つまり、それまでこいつと二人っきり…。……っていうか、俺部屋に戻っててもいいよな?
 俺はソファから立ち上がると、自室に向かう。急に動き出した俺を不思議に思ったのかクソ会長が顔を上げた。じっとこっちを見つめてくる視線には気づいているが、そのまま無視して足を進める。

「おい、どこに行くんだよ」

 俺がどこに行こうと関係ないだろと思ったが言ったら言ったで面倒なことになりそうだ。これまでの流れからすると。
 足を止めないでいると、クソ会長も立ち上がる。俺に近づいてくるのが分かった。

「シカトすんじゃねえ」

 何故俺に構うのか。激しく舌打ちしたい気持ちを抑える。すると、クソ会長は俺の腕を掴んだ。強い力で掴まれてしまい、俺は已むなく足を止めたのだった。

「……はぁ。部屋に決まってんだろ」
「何で」
「何でって…言う必要あるか?」
「いいや、ねえよ。でもここで一人で何しろってんだよ」
「じゃあ帰れよ…」
「さっきの話聞いてたか? 翔太が帰ってくるまで付き合えっつったんだよ俺は」

 こいつぶっ飛ばしてえ…。
 呆れながらクソ会長を見上げる。どういう教育されたらこんな我儘で人の話聞かない奴になるんだ。これに比べたら戸叶のしつこさなんて全然だな。ウザイのには変わりないが。

「会話もないんだから別にいいだろ」
「お前、話振らないじゃん」
「話すことがないからな」
「つまんねえやつ」
「…取り敢えず、手放せ」
「あ、お前に訊きたいんだけどさ」

 ひ、人の話聞け……! 睨むが、全く気にした風もなく言葉を続ける。

「訊くか迷ったんだがな…。スッキリしねえし、訊くとする。お前、何であの時、俺のこと言わなかった?」
「は?」

 あの時、とは。もしかしてクソ副会長とクソ会長が教室に来た時のことだろうか。