※微性描写あり

「な、中村様…!」

 クソ会長の下にいる男が嬌声と共に驚きの声を上げる。欲に溺れた顔と声。そして、俺にまで媚びる視線。気持ち悪さに顔を歪めた。

「何だよ、覗きか?」
「んなわけねえだろ…。それにしてもてめぇ、どういうつもりだ」

 俺がいるというのに行為を続行するクソ会長をギロリと睨む。今俺の顔は少し青ざめているかもしれないな。こんなもん、見たくねえが俺はこいつに訊きたいことがある。

「あぁ? どういうつもりって、っどういう、意味だよ?」
「ぁっ…!」

 色気の含んだ吐息を吐きながら腰を打ち付ける。漏れるぬちゃぬちゃとした音に只管苛立ちが募っていく。クソ会長はこちらを見ない。

「てめぇは、翔太を好きだったんじゃねえのかよ」
「――だからどうした?」

 平然と答える奴にカッと頭に血が上る。

「じゃあ何でこんなことやってんだよ!」
「はあ?」

 漸く動きを止めて俺の方を向く。訳が分からないという目をしているクソ会長にチッと舌打ちする。

「…そいつ、恋人か何かか?」
「ハッ、バカ言えよ。俺が好きなのは翔太だっつってんだろ。こいつはただのセフレ」
「……お盛んなこった」

 今度はクソ会長が舌打ちをする。ずるりと性器を引き抜くと、ティッシュでそれを拭き、ズボンに収める。そして困惑している男を見下ろし、言った。

「萎えた。帰れ」
「えっ…!」
「帰れ」
「は、…はい」

 男は震える手で慌てて身なりを整えると、出て行った。…いつもこんな風にしてんのかよ、酷い奴。

「で――、本命がいるからセフレはダメってか? 仕方ねえじゃねえか、翔太がヤらせてくれんならいいけど」
「ってめぇ…!」

 ぐっと拳を握ってクソ会長に向かって振った。しかしそれは簡単に掴まれる。

「っ、俺は、そんな軽い気持ちで近づく奴に絶対翔太をやらねぇ」
「……おい、犬」

 冷たい視線が突き刺さる。情けなくも、一瞬体が震えた。

「俺のやることに口出すんじゃねえ」

 ぐっと手首に力が込められ、痛みに顔を歪める。無表情で見下ろす顔と張り詰めた雰囲気がふと消え、そういえばという顔で俺を見た。
「お前…」
「…な、何だよ」
「……いや、なんでもねえ」

 そう言って俺の手をパッと放す。そのまま俺の横を通り過ぎて行く。

「――そうだ、犬。俺の名前はクソ会長じゃねえ。久賀直人生徒会長様だ」

 談話室のドアが閉まる。俺ははー、と溜息を吐いて髪をがしがしと掻き回した。

「俺だって犬じゃねえんだけど」

 嫌な臭いに顔を顰め、俺も談話室から出る。