「見て分かんねえのか?」

 クソ会長がニヤリと笑う。俺は睨み返そうとして、空音の言葉を思い出す。……このクソ会長がクソ副会長より仕事してる、ねえ…。ジロジロと見過ぎたせいか、少し驚いたような顔をして、直ぐに顰めっ面になる。訝しげな視線に俺もハッとして顔を逸らす。
 …つーか、クソ会長のいる席、俺の席なんだけど。早く退いてくんねえかな。
 しかし、翔太が静かすぎないか? と思って翔太を見る。すると、何故か顔が強ばっている。……? よく見れば、翔太の肩にはクソ会長の手が乗っている。ざわりと胸が騒いだ。…まさか、な。いや、気にしすぎだ。

「あ、あの、中村、くん」
「あ?」
「席、座ってくれないかな、なんて…」
「……このクソ会長に言えよ。俺の席はそこだ」
「あー、これ犬の席か」

 犬って呼ぶな。
 今度こそギロリと睨むと、クソ会長はフンと鼻を鳴らして席を立つ。――しかし、その手は翔太の腕をしっかり掴んでいた。

「てめぇ、まさか」
「ちょ、ちょっと、会長? なんで腕を…」
「生徒会室に連れて行くからだ」

 一気に翔太に向ける視線が強くなった。俺はチッと舌打ちをしてクソ会長の胸倉を掴む。クソ会長はじっと俺を見ていた。何も動じてないような、俺の存在なんてまるで興味がないというような――。相手にされていないことにカッと血が上る。

「おい、馬鹿じゃねえのか! 何言ってんのかわかってんのかよ!」
「煩いですね。何て躾のなってない犬だ」

 クソ副会長が軽蔑した目で俺を見る。……てめぇまで犬って呼ぶなよ。クソ腹立つな。俺は一度睨み、口角を上げる。

「…そういや、てめぇは仕事全くしてねえんだってな?」
「なっ…」

 教室がヒソヒソ話で煩くなる。そして疑うような目でクソ副会長を見た。クソ副会長はギリっと歯を鳴らして俺を睨む。王子様とかなんとか言われているが、今その面影なんてねえな。姑みたいな顔してやがる。

「何を根拠にそんなことを」
「ダチが言ってたから」
「ダチ…? どうせ不良なのでしょう。そんな奴の言うことを誰が信じるのです」
「不良? あいつは不良じゃねえよ。ちゃんと生徒会役員してるぜ」
「はっ? ま、まさか」
「ああ、そうだ。空音明だよ」

 目を見開くクソ副会長。そしてクソ会長も意外そうに俺を見る。そういえば、まだ胸倉を掴んだままだった。俺はこれ以上触りたくねえと手を放す。