どういうことだという目で見られて、俺は頬をぽりぽりと掻き、ごろんと寝転がる。反対に、戸叶は上半身を起こす。

「……あいつが転入してきて、話してるうちに…俺なんかと話しててもすげえ楽しそうにしやがるし、良い奴だなって思ってたら…いつの間にか好きになってた」
「はあ!? ちょっと、俺が嫌がりながら話してるとでも思ってるのー!?」
「や、別にんなこと思ってねえよ。でもお前は…世話のかかる弟みたいなやつだし」
「……っ」

 笑って言うと、ぎり、と歯軋りをして戸叶は黙ってしまった。

「戸叶?」

 俺は不思議に思って体を起こそうと力を入れた。しかし、思い切りコンクリートに打ち付けられる。――戸叶の手によって。後頭部と背中を強打し、痛みに顔を歪める。戸叶が覆い被さり、光が遮断された。

「っ何しやが――」
「…れだって」
「あ?」
「俺だって、淳ちゃんのこと好きなのに!」

 切ない声が響く。戸叶は泣きそうな顔をしていた。クラクラする頭でぼおっと考える。――俺を、好き?

「と、戸叶…? 冗談は」
「冗談なんかじゃないよ」

 その声も顔も真剣そのもので、俺は声が出せず、瞬きすらできなかった。

「分かってるよ、俺の傍にいるのは俺が体弱いからだよね…。淳ちゃんは優しいから、友達いない俺と一緒にいてくれる」
「…おい、それは違う。俺は、確かにお前の体は心配だけど、俺がお前と一緒にいたいからいるんだ」
「淳ちゃん…」

 ポンポンとふわふわの天パを優しく叩いて笑う。うるうると滲む瞳に更にくすくすと笑っていると、瞳が大きくなって――え、な、何か顔近づいてきてないか!?

「ちょ、まて――ん」
「んっ、淳ちゃん、好きだよ」

 甘く蕩けるような笑顔に顔が真っ赤になる。俺は慌てて胸を押して体を起こす。口をごしごしと拭うと、不満げにこっちを見てくる。

「そんなに擦らないでよー、酷いなあ」
「酷いって…お前な!」
「別にファーストキスに夢見る乙女でもないんだし、いいじゃーん」
「そういう問題じゃねえ!」

 はあと溜息を吐きながら、にこにこと笑っている戸叶を見る。許可なくキスしてきたのは腹立つが、……元気そうでよかった。顔色も良い。

「……おい、何してんだよ」
「え? 別に何もしてないけど」
「何もしてないことねえだろ! 何で抱き着いてんだ!」
「抱き着きたいから」

 こいつ、今日は一段とうぜぇ…。