「そういえば、今日は二人なんですか?」
「ええ、まぁ…」

 そう言って少し気まずそうにする副会長。俺はギロリと睨んだ。どうせこいつら、仕事押し付けて来たんだろう。来るならちゃんと自分の仕事をやってから来いよと思う。
 俺は空になった皿と茶碗を見て立ち上がる。

「……行こうぜ、翔太」
「え、あ、おう。じゃあ先輩たち、お先に失礼します!」
「ちょ――」

 副会長が立ち上がった翔太を引きとめようとする。しかし、笑顔を向けられ、渋々諦めたようだ。

「……あんま調子に乗るなよ、犬」
「うっせー」

 つか犬言うな。
 ニヤリとあくどい笑みを浮かべたクソ会長から顔を背け、俺と翔太は食堂を後にした。



「淳也、携帯光ってる」
「あ?」

 翔太に言われ、携帯を見てみると確かにランプがチカチカと光ってメール受信を知らせていた。このランプの色は、戸叶だ。少し顔を強ばらせて開く。

『屋上に来て』

 ……何だ、んなことか。ほっとして携帯を仕舞って立ち上がる。

「え、どこ行くんだ? もう授業始まるけど」
「サボる」
「え〜。淳也いねーと暇なんだけど」

 詰まらなそうに言う翔太にドキリとして留まりたい気持ちが溢れる。…だが、あいつが呼んでるなら行かなければならない。

「まあ、いいや」

 いってらっしゃいと手を振る翔太に笑みを残し、教室を出て気持ち早足で廊下を歩いた。



 屋上のドアを開けると、広々とした青空が俺を迎える。青空の下に、戸叶は寝そべっていた。

「おい、戸叶」
「お〜早いねぇ、淳ちゃん」

 ゆらゆらと手を振る戸叶に近づき、腰を下ろす。

「お前、いつ戻ってきたんだ」
「さっきー。でさあ、気になる噂聞いちゃったんだけど」
「気になる噂?」
「――…淳ちゃんが転入生に懐いているって」
「っ…な、なつ!?」

 な、何だその懐いているって!
 かああと顔を赤らめると、戸叶が訝しげに俺を見る。

「…何、その顔。本当なの?」
「ま、ちがっては…ねえ、かな」

 懐くっていうのはちょっと、犬っぽくて嫌だけど。