炒飯が運ばれてきて、早速一口食べる。水分の含んだ炒飯は好きじゃないが、ここの食堂の炒飯はパラパラとしているから旨い。チラリと前を見る。……納豆にキムチってすげー組み合わせだ。

「…いつ見てもお前の食事はなんつーか…インパクトあるな」
「そうかあ? これ、旨いんだけどな。あ、一口いる?」
「いらん」

 スプーンで掬って俺に向けるが、俺は即答して首を振った。あーんってのは、そりゃ男のロマンだし、やってもらいてえけど、俺はあれを食べる気にはなれない…。
 ぐちゃぐちゃと納豆とキムチを米に混ぜている姿を顔を引き攣らせながら見ていると、不意に食堂が揺れた。地震の揺れではない。人の歓声だ。
 ――あいつらがとうとう来やがった。耳を押さえながら食堂の入口を睨む。皆食堂の入口を見ていた。その中で一人、少しだけ眉を顰めて食事を続けているのが翔太だ。本当にこいつは只者じゃねえな。俺はまだこの悲鳴に似た歓声に慣れていないのに、こいつは初日しか驚かなかった。
 コツンと足音がして、一瞬で食堂が静まり返る。生徒会の奴らは堂々とした態度で歩く。じっと見ていると、視線が合ってしまった。直ぐに逸らしたが、一瞬ニヤリと笑ったのを見逃さなかったぞ俺は。

「……やべえな」
「何? やっぱりこれ欲しかった?」
「いや飯の話じゃ…そのキモい物体こっちに近づけんじゃねえよ!」
「キモい物体って何だよ! これ旨いんだからな!」
「マジでいらねーって! クセェんだけどそれ!」

 納豆とキムチの臭いが混ざってマジでやべえんだって! つーかんなこと言ってる場合じゃねえ! こっち来てるし! 目立ってるし!
 脳内で激しくツッコミながら、俺は貧乏揺すりをする。凶悪な顔になっていたのか、翔太の横に座っていた奴がヒッと小さく悲鳴を上げた。

「――よぉ、翔太」
「ん?」
「今日も可愛らしいですね」

 生徒会長と副会長が翔太に笑いかける。翔太は振り返ってあー、どうもと気の抜ける声で挨拶し、再び料理に向き直った。そのまま副会長が俺を見て顔を歪める。

「ああ、またアナタですか」

 どうしていつもお前がそこに、という嫉妬丸出しの視線に俺はチッと舌打ちをした。

「翔太、今日は一緒に食べ」
「もう食べてんだろうが。見て分かんねえのかよ」
「…あぁ? 俺の言葉を遮ってんじゃねえよ」

 ピリピリとした空気が俺とクソ会長の間に流れる。俺はフンッと鼻を鳴らして炒飯を口に含んだ。
 耳に入るのは翔太への悪口。胸糞悪くて仕方ない。さっさと食べて、翔太を連れ出したかった。