食堂に着くと、視線が一斉に集まった。俺に対するものも勿論あるが、翔太は俺以上に視線が突き刺さっている。俺が一緒にいることも関係あるだろうが、翔太はどこがいいのかは俺には分からないが絶大な人気を誇る生徒会のお気に入りだ。何を見ているのか、翔太が生徒会に取り入ろうとしているとかなんとかふざけたことを抜かしている奴もいる。殴ってやりたいが、そんなことをしても翔太は喜ばないだろう。それに翔太もちゃんと男だ。俺は翔太が助けを求めたときは助けるが、それまでは好きにやらせてみようと思う。

「どこ空いてるかな」

 キョロキョロと見渡す翔太と同じく食堂内をざっと見る。一つ席が空いている場所は点々とあるが、二つ隣り合わせ、もしくは向かい合わせで空いている場所は見当たらない。俺は焦った。早くしないと生徒会の奴らが来てしまう。この食堂には生徒会専用のテーブルというのがあって、そこは生徒会の奴らか生徒会が許可した相手しか座れないふざけた席だ。一緒に食事をしたいがために翔太を連れて行こうとしてしまう。翔太は俺一人になってしまうのを気にして、断ってくれたのには感動した。だが、それもあの忌々しい生徒会長の一言で台無しだ。「じゃあその犬も特別に許可してやるよ」
 誰が犬だよ誰が。ツッこむのも面倒でそのままシカトしてやったがな。
 兎に角、俺はあんなところで食べたくないし、翔太にも食べさせたくない。必要以上に構ったり特別扱いしたりして翔太への風当たりが強くなるのをあいつらは分かっていないのか? と疑問に思う。生徒会なんだからもうちょっと周り見渡したりこの学校のことを理解しろよ。
 取り敢えず席に着いて食べ始めていれば、連れて行かれることはない。俺はもう一度見回した。――と、そこで二人の生徒が立ち上がる。

「翔太、あそこ空いたぞ」
「おー! よくやった淳也!」

 キラキラと曇りのない笑顔に俺も顔を弛め、早足でそこへ向かう。こそこそと翔太を見て話している奴らにムカムカとする。チラリと翔太を見たが、気にした様子はない。そういえばこの前、ここの風習はまだよく分かんないけど、皆の尊敬する奴らを独占しちゃってんなら、俺も悪いしなと苦笑していたっけ。
 席に着くと、カラオケにあるような機械で注文をする。今日は炒飯でも食べるか。

「そういえばさっきの授業さー」
「ああ、お前寝てたな」
「げっ、見てたのかよ。あー…じゃあ、そのー」

 チラチラと笑みを浮かべながら見てくる翔太に溜息を吐いて苦笑する。

「ノート、貸してやろうか?」

 惚れた弱みなのかなんなのか、俺はこいつに甘いと思う。