…こ、この葉っぱってどこに入れるんだ? えーっと、…良く分かんねえし、そのままカップに入れていいよな? よし入れよう。分量は適当でいいよな。
 何だか違う気がしたが、バサーっと葉っぱをカップに入れて水を入れる。そしてそれを電子レンジに突っ込んだ。しかし、入れて閉めただけでは何も起こらない。腕を組んで電子レンジを見つめる。温度の設定とあたため開始って、先に温度を設定するんだよな…? え、何度にすればいいわけ? えーい! もうヤケだ。このまま押してやる!
 ボタンを押すと、突然回りだすレンジ内。その光景を初めて見た俺は電子レンジにべったりと顔をくっつけて中を見る。

「す、すげえ…」
「……何やってんの、お前」
「うぉあ!?」

 急に呆れたような声が後ろから聞こえ、驚いて肩が跳ねた。電子レンジから顔を離して振り向くと、相変わらず無表情にこっちを見ている。……何で吉貴がいるんだ。さっきは俺が頼んでも頑なに立とうとしなかったっていうのに。

「それ、もう出していいんじゃねえの」
「は…?」

 見ると、温度が表示されていて、それは八十度を超えていた。やっべ、俺猫舌なのに。慌てて取り出すと、……何だか思っていたものと違うものができてしまっていた。葉っぱって、浮いてなかったよな確か…。やっぱりこの方法は違うのか。
 まあこれでいいやとリビングに戻ろうとすると、吉貴が目を丸くしてコップを見ていた。こういう顔は初めて見たので新鮮だ。でも長くは見ていたくないので直ぐに逸らした。

「そ、それ…まさか」
「あ? 茶だよ茶」
「…何で茶葉浮いてんの」
「この葉っぱか? まあ…その、なんだ、突っ込んでくれるなそこは」

 馬鹿にしたような視線は心底腹立つが、自分でもこれが本来の茶でないことを知っている為、何も言えなかった。…つーか、飲めりゃいいんだよ飲めりゃな!
 兎に角喉が渇いていた俺はそのまま吉貴の横を通り過ぎて先にリビングに戻った。ソファに座り、一口。

「ま、まっず…」

 っていうかやっぱり葉っぱが邪魔だなこれ。何とも言えない気持ちで眺めていると、吉貴が細長い容器を持って戻ってきた。中には橙色の液体が入っていて、思わず呆然とそれを見る。何だその絵の具みたいなものは。「何だよ、それ?」

 答えてくれないかもしれないなとは思ったが、吉貴は嫌そうに眉を動かすと、明らかに不機嫌な声で答えた。

「普通のオレンジジュースだけど」
「おれんじじゅーす…」

 表情がまるで常識だろと言っているようで、そりゃあ何だとは訊くことができなかった。