「な、何してんるん自分ら?」

 手の形を確認されるように触られていると、いつの間にか皆の視線がこっちを向いていた。…そりゃそうだよな、こんな堂々とやってりゃな。
 ニャッキが頭上にハテナを浮かべながら首を傾げる。…俺が聞きたいわ、それは。

「お前の手…」
「俺の手?」

 呟くと、ガルの手の力が緩んだ。今のうちだと手を引こうとすると、再び掴まれる手。いい加減にしろよテメェ! 面の下からギリギリと睨むが、当然伝わる筈もなく。
 十夜が溜息を吐きながら近づいてきて、ガルと俺の手を離す。漸く自由になった手をぶらぶらと振った。

「サンキュ」
「この馬鹿」

 え、何で罵られたんだ、俺。おかしくね? 悪いのはガルだろ、どう考えても!

「え、意味わからんのやけど。どうしてケェさんの手握っとったん、ガルくん」
「こいつの手の形が良かったから」
「えっと…手フェチ、なんですか?」

 マコの問いに小さく頷くガル。

「ん」

 言われて自分の手を眺める。普通の手なんだけど…。

「また握らせろ」
「却下。ほら、お前も菓子を食べる!」

 適当に掴んだ赤のマカロンをずいっと口元に持っていくと、がしっと掴まれる手首。あ、あれ…。何かデジャヴ…。
 フッという鼻で笑うような声がしたと思ったら、そのまま引っ張られる手。そしてあろうことかこいつは俺の指ごと口に含みやがった。べろりと指を舐められ、背筋がぞくりとする。っていうか汚ねぇ!

「て、テメェなあ」
「旨かった」
「そうかよ。ほら、離せ」
「ヤダ」

 聞き分けのない子供を相手にしている気分になった。ぐぬぬぬと一向に離さない手を引っ張ってみるが、微動だにしない。俺の力が弱いわけじゃねえ。こいつの力が強すぎるんだ。

「あ、あの…Kさん嫌がってますし…」
「そやで。つうかケェさんの手そんなにいいん? ちょっと俺にも握らせてや」

 アキとニャッキが口を挟む。内心グッジョブと思って聞いたが、ニャッキお前もか…。握られて触られて終いには舐められる俺の身にもなってくれ。

「ッチ」

 舌打ちをすると、手が解放される。ちょっと指先がべっとりしてるが、まあ許そう。俺は手を洗う為に立ち上がった。