「じゃじゃーん!」

 機嫌の良さげな声でドアを開いたニャッキは、チョコチップクッキーを入れた大きめの皿をテーブルの真ん中に置き、席に着かずもう一度給湯室に入ったかと思うと、コーヒーを人数分、トレイに乗せて戻ってきた。それを一人ずつ配り終えると席に着いた。…な、なんて気が利くやつなんだ。しかも皿を数枚持ってきてくれている。

「皆も食べてやー」
「サンキュ。あ、俺のマカロンも好きに食べてくれ」
「あ、じゃあ俺のクッキーも」
「僕の持ってきたのはゼリーなんですけど、良かったら…」

 俺が指示するまでもなくわいわいと騒がしくなる室内。うんうん、いい雰囲気だな。……いや、でも話に全く参加してない奴が二人いるな。キコとガル。こいつら…だから社交性というものをだな…! じっとキコを見ていると、視線に気づいたのかこっちを向く。

「何」
「いや、…お前は何を持ってきたんだ?」

 それに応えることなく、ポケットから飴玉を取り出した。まあ菓子っちゃあ菓子だけども。まさか初日からそんな間食にギリギリ入るようなものを持ってくるとは思わなかった。いや、全然いいんだけどな。
 …よし、折角だから親交を育んでみよう。俺は体を少し近づけると、飴玉を眺める。グレープとオレンジ、ピーチなど王道なものから、納豆味など珍妙なものまである。な、納豆味って、…旨いのか? いや、旨くないだろ絶対!

「キコは何が好きなんだ?」
「…特にない。手に取ったものを食べる」
「じゃ、じゃあその納豆味ってのも…?」
「気になる?」

 にや、と笑ったのが雰囲気で分かった。食べたい気もするけど…う、うん、
やっぱりほら、そんなゲテモノは俺のような美食家には合わないっていうか…。首を振って拒否すると、えー、という不満げな声が上がった。

「旨いのに」

 小さく呟いて、包装を開けると面を少し浮かせて口に放り込む。その様子を見つめたまま硬直する俺。…べ、別に納豆味が気になるわけじゃない。…っていうか、臭っ。
 無言で顔を背けると、チョコチップクッキーを食べる為、手を伸ばす。――と、何故か俺の手首を掴む手。辿ると、その手の主はガルだったらしい。

「何だ?」

 首を傾げるが、相変わらず返事はない。もみもみと手を強弱つけて揉まれてしまい、俺は一体どうしたらいいか分からず、そのままの状態でいる。っていうかガルと俺の距離は結構あるから、割と腕と体制が辛い。…と、十夜、ヘルプミー!