「で、ガル。お前は菓子どうした?」

 声をかけるが、無反応。相変わらず行儀の悪い座り方をしている。そこは食事するテーブルであってだな……。注意をしても無駄に終わるだろうと思うから、取り敢えず今は菓子の有無の確認だ。もし持ってきてないなら冷蔵庫に予め入れておいたマフィンやババロアがあるから、それを食べてもらおう。

「ガル」

 俺シカトされすぎだろ。悲しくなってきたわ。え、何? 俺嫌われてる?

「あ、あの…ガル、さん」

 それまで縮こまっていたマコが恐る恐るガルに手を伸ばす。凶悪な面を着けた小柄な奴と可愛らしい面を着けたガタイのいい奴。……何度見てもシュールだ。ポンポンと肩を叩くのを見守っていると、ピクリとガルの体が小さく動く。それに驚いたのか、さっと手を引くマコ。

「…ふぁ」

 噛み締めるような声を上げると体制を変え――……ん? 今のって欠伸だよな。…寝てたんかい! 紛らわしいな、面を着けてると。

「お前…いつから寝てたんだ?」

 しかし…嫌われてるわけではなかったんだな。良かった、できるだけ仲良く活動していきたいからな。

「知らね」
「あ、そういえば…直ぐにこっちに向かったんですけど、俺が来た時にはもういました」
「……そうか」

 学年やクラスは知らないたのか知らないが、直ぐに向かったというアキよりも早いってのは……あ、もしかしてサボったのか? ここは一般生徒の寄り付かない場所だし、活動場所がここだということを部員以外には教えてないから大丈夫だろうが…万が一見つかりでもしたら厄介だろうな。今後十夜にも注意してもらっとこう。
 因みに皆、面はどの時点で着けてきているんだろうか。一応隠し通路を通ってもらってるけど、それが面を着けてても着けてなくても、後を付けられたらアウトだ。…暗証番号を入力する扉でも作るか? バレるのだけは阻止したいからな、本当に。

「それで、菓子はお前持ってきているか?」
「あー…? 菓子? これくらいしか持ってきてねえ」

 面倒くさそうな声を出しながら床に置いていたらしいビニール袋からバウムクーヘンを取り出し、テーブルの上に置く。ちゃんと持ってきているようで良かった。何だかんだ、部活に参加するつもりはあるらしいな。寝てたけど。