(side:駿)

 部室となった部屋の中には俺と十夜を除いて五人。俺は面の下で笑みを浮かべ、口を開いた。

「…よく集まってくれた。前に言ったように、俺の名はK。そして…」

 俺の横にいて、唯一立ったままの十夜に顔を向けると、十夜が一歩前に出た。

「俺はオメガだ」

 あっ、こいつ名前格好付けやがって。絶対響きだけで決めただろ、お前!
 舌打ちしたいのを堪え、十夜から視線を外して前を向く。

「じゃあ、お前から順番に」

 左――猫の面の奴に声を掛けると、そいつは少し背筋を伸ばした。緊張してるんだろうか? 顔隠してんだから堂々としろよ。

「あ、アキ…っす。宜しくお願いします」
「アキな。――次」

 本名ではないだろうが、名前を捩ったのは感づかれる可能性がある。こいつは別に構わなくても、俺が構う。それは後々面倒だからだ。
 猫面の隣を見ると、面の柄に一瞬面食らう。いや…洒落じゃないぞ。

「キコ。……宜しく」

 それだけ言うと黙ってしまったキコという奴の面は、ションボリした時に使う顔文字だった。中身はクールなのか知らないが、凄いギャップがある。何でその面をチョイスしたのか訊いてみたい。
 次を促すと、ひょっとこの面をした男がいきなり立ち上がる。皆驚いたように体を震えさせてそいつを見た。

「俺はニャッキっちゅーモンや! 好きなのは生クリームたっぷりのショートケーキ! なあなあ、ケェさんは何が好きなん!?」
「え、と、取り敢えず落ち着け」
「おう! で、何!?」

 いやいや全然落ち着いてないだろお前! つかテンション高っ!
 後で話す、と一先ず話を終わらせてニャッキの隣に視線を移す。そいつは暫しニャッキを見ていたが、俺が見ているのに気付いたのか、面をこっちに向けて小さな声で言った。

「ぁ…あの、マコ、です」

 そして俯いてしまった。面から覗く耳が赤くなっているのを見るに、赤面症なのかもしれない。マコは中々凶悪な顔をした兎の面を着けている。…またギャップかよ。そんなギャップ求めてねぇから!
 そして最後、なんだか只ならぬオーラをさっきから向けてくる愛らしい犬の面の奴だ。凄く睨まれている気がする。

「……ガル」
 そして舌打ち。マコが体を震わせた。そんな可愛らしい面を着けてこの性格…だからギャップは求めて以下略。