今日は一週間に一度の朝会がある日だ。俺は手の中の狐面をぐっと握った。
 甘い物をこそこそしながら食べるのに耐えきれなくなった俺は、先日十夜にこう言った。

「甘党部を作る」

 正体がバレずに甘い物を口にする。つまり、顔を出さなかったらいいのだと考えた。
 勿論反対されたが、俺の決心は固い。それを分かってくれたのか自分が傍にいるという条件付きで渋々承諾してくれた。
 俺の母親から世話を頼まれている云々を聞かされたが、正直んなことしなくていいと思っている。ウザいし。
 まあそんなこんなで仮面を身に付けて、ウィッグを被り、更に念の為ボイスチェンジャーも使って、甘い物を存分に食べようと思うわけだ。部活は、今から作る。

「これで朝会を終わります」

 頭の寂しい校長がそう言うと、皆方向転換して体育館から退出しようとしている。俺は足を仮面の内側に小型のマイク付きボイスチェンジャー(俺の家が開発した物だ。まだ未発表)を付け、面を嵌めると足を踏み出してステージに踊り込む。

「お前ら、聞けェっ!」

 機械的に変換された俺の声が体育館内に響き渡る。ぎょっとして館内にいる奴が俺を見た。教師や校長たちは一瞬ポカンとし、我に返ったかと思うと一部が取り乱した。一部以外の奴は面白そうに目を細める。
 その中に理事長の姿を見つけて面の中で弧を描いた。甘党部を作る為に協力してくれた一人だ。甘い物が好きだと知っている一人であり――っていうか、ぶっちゃけると十夜の父親だ。贔屓と言ったら聞こえは悪いが、この他にも色々な面で協力をしてくれている。
 大勢の視線を感じながら俺は口を開く。

「俺はK。仮面甘党部の部長だ!」

 「仮面? なにそれ」「あいつ誰?」「顔見せろ顔!」「っていうか甘党部なんてなくね?」一瞬静まったかと思うと、次いでザワザワと騒がしくなる。いい反応だ。これで無関心だと虚しいからな。

「俺は甘い物が大好きだ。しかし、それを公に出せない理由がある。そこで俺は仮面甘党部を立ち上げた。俺のように甘い物が好きな奴、周りにバレたくない奴は歓迎する。俺だけ素性を隠すというのはフェアじゃないから、入部する奴は必ず面を付けること、それが条件だ」

 声を張って指を鳴らす。すると天井からはらはらと紙が落ちてきた。