俺をじろりと睨めつけた後、俺の横を見る。驚いたように目を見開くとニヤリと笑った。

「なんだ、そいつ? ついにパシリでも見つけたか」
「違う」

 俺は馬鹿にしたような笑みを睨んで即座に否定する。そして哲史の様子を窺うと、気にするなというように笑った。俺はそれに安心して笑い返した。

「…ああ?」


 俺たち――というか、俺を不審そうに見つめる日向野は、苛立っているように見える。……あ、っていうか、これ地味にヤバくないか? こんな朝から喧嘩売られたら飯が食えなくなる。サボれば食べれるには食べれるんだけど、哲史と、っていうところが重要だ。

「えーと…翼、知り合い?」

 戸惑ったように俺と日向野を交互に見遣るので、昨日話した奴だと答える。そういえば昨日自分はビビリだと胸を張って言っていたが、日向野は大丈夫だろうか? 俺よりも不良スタイルだけど…。

「あー、凝りもせず翼に喧嘩を売ってくるって言う物好きな人?」
「はあっ? てめっ、変なこと吹き込んでんじゃねえ!」

 …えー、でも、事実じゃないか。少し不満げに見ると、日向野は俺に殴りかかってきた。俺は体を捻ってそれを避ける。

「ぎゃー! ちょ、翼大丈夫!?」
「ああ、大丈夫。日向野、今日は相手できない」
「今日はじゃねくて今日もじゃねーか!」

 そうとも言いますね、あははは。……さて、どうしよう。何か昨日からこいつ、いつもより苛々してないか? でも俺に肩貸してくれた時は普通だったし…。そうだ、戸次と会ってからだ。もしかして何かあって仲が悪いのかもしれない。

「哲史、もう行こう。…じゃ」
「おい! じゃ、じゃねえよコラァ!」