色々な話をしている内に同じクラスだということが判明した。俺教室に行ってなかったから初耳だ。まあ教室に行ってても名前とか存在とか認識はしなかっただろうけど。
 暫くして時計を見ると結構な時間になっていた為、風呂に入って自室に戻った。部屋のドアを閉めると、俺はベッドに直行して勢い良く倒れ込んだ。ボフンという音と柔らかい感触。そしてフローラルな洗剤の香り。構造は今までと何一つ変わらない部屋が、何だかとてつもなく豪華なように思えた。俺は目を瞑って先程の哲史の言葉を思い出す。

「明日、一緒に行かない?」

 寧ろ、一緒に一緒に行って下さい!
 俺はニヤニヤと笑みを浮かべる。多分今気持ち悪い顔をしてるんだろうな。でも、凄く嬉しいんだ。友達だよ友達。うおおおおお。俺は感情に任せてゴロゴロとベッドの端から端まで転がる。駄目だ、興奮して眠れない。
 明日が楽しみだ。こんなに楽しみなのは初めてかもしれない。……って、やべ。卓上にある携帯が一定のテンポでチカチカと点灯していた。メール来てる。絶対兄貴だろこれ。
 慌てて起き上がり、手を伸ばして携帯を手に取る。そしてメールを開くと、絵文字も顔文字も何もない簡潔な一文があった。『明日、昼は一緒に食べるぞ。その後雑用な』
 ……あー、そういや、一週間パシリなんだっけ。雑用って、何すんだろ…。了解、とだけ打ち返して俺は再び目を閉じる。気持ちが落ち着いたからか、眠くなってきた。俺は今日の出会いに感謝しながら、意識を手放した。




 いつもより早く起きてしまったので、俺はテレビを眺めていた。するとドアが開いて哲史が出て来た。俺は挨拶を言おうと哲史に目を向けて、――固まる。

「…おはよ」
「お、おはよう…」

 え、誰これ。別人?
 そう思ってしまうほど哲史の顔は怖かった。目は細められていて、不良か見紛うほど眉は顰められていて、気のせいか纏うオーラはどす黒い。

「あ゛ー、気にしなくていいから。俺、凄い低血圧なの」
「そ、そうなのか…」
「…顔洗ってくる」

 そう言ってのそのそと洗面所に向かう背中を見送った。