「兎に角、あんまり近づくな。じゃねぇと殴る。一回につき十回くらいな」
「多すぎじゃね!? つか、日向野の場合不可抗力なんだって!」
「知らん」

 なんて無責任な! 不満げな表情で兄貴を見つめると、その顔が気に入らなかったのか、頭を殴ってきた。……俺が頭悪いのって兄貴がボカスカ殴るからじゃないか…? いや、俺が勉強あんまりしないっていうのもあるんだけど。あとサボってるのとか。

「ところで、兄貴、もしかして戸次のことだけで俺をここまで…?」
「違うに決まってんだろ。…まあ、その前に俺の電話に出なかった罰だな」
「げっ…!?」

 そういえば後で覚えてろよとかなんとか言われてたっけか!? 絶望を浮かべると、ニヤリとあくどい顔で笑んだ兄貴は、俺を離してソファーに座った。長い足を綺麗に組んで、腕を組む。

「一週間俺のパシリ」
「……ん? それだけ?」
「お前、パシリ嘗めてんなよ。扱き使ってやるからな」

 うわ…それは嫌だ。サボれないじゃないか。…それに、兄貴といれるのは普通にいいんだけど、周りの目があるからな…。

「ていうか…目立ちそう」

 俺が兄貴の手伝いしていたら、更正したなんて噂されそうだ。…あれ、それは寧ろいいことなのか? でもこんな見た目してったからなー。

「あ? 知らねぇよ、んなの。もういっそのこと見せ付けてやるか。俺たちの仲をな?」
「いや…つい先日まで指導する教師と指導される生徒が、急に仲良くなったらおかしいだろ」
「ッチ」
「取り敢えず…一週間かあ…。何すればいいわけ?」
「まだ決めてねえが…そうだな、主に俺の身の回りの世話だ」

 あんまり今と変わらない気がするんですが…。