その一件で見事に不良のレッテルを貼られた俺は、違う意味でまた一人になった。誰も目を合わせないし、誰も声を掛けてこない。こそこそと陰口は言ってたけどな。暴言に慣れていた俺はもう気にしなかった。もう開き直って髪とか染めてみたんだぜ。そしたら余計に引かれたんだぜ。……いや、実は開き直る前に、嬉々として兄貴に染められたんだけど……。寧ろ変わるきっかけになってよかったのかもしれない。髪もばっさりと切られて、中学に上がると共にコンタクトにもなった。猫背と人見知りは直らなかったけど、ポケットに猫背って凄い不良っぽいし、態々俺に話しかけてくる人なんて不良以外(しかも不良とは和気藹々と話すわけでもないし)いなかったから別にいいと思う。
 中学は同中の奴らが多かった。しかも俺も不良だし自分から話しかけることもないから友達ができる筈がない。おまけに小学生の時は絡まれることはなかったけど、流石に中学では目を付けられた。主に上級生と教師にな。
 こんな感じで、根暗から不良にメタモルフォーゼして、すっかり不良が板についた俺は、三年生でこの学校に来たときも然りだからな。もう友達できなくて青春終わりそうだ。いや、俺も分かってる。俺が人を寄せ付けない雰囲気にしてるんだ。不良だって、この学校にも沢山いるけど、仲間と連んでるしな。でも人見知りって、そんな簡単に治るわけない。
 俺はそこまでで思考を停止して、小さく欠伸しながら、壇上を見た。頭の禿げた校長がなにやらずっと話している。退屈だ。周りも真剣に聞いている奴なんて少なくて、隣の奴とかと親交を深めている。いいな、俺も混ざりたい…。楽しそうに話している隣の奴をじっと見ていると、視線に気づいたのか、話し相手が真っ青になったからなのか、こっちを向いた。そして固まると、見る見るうちに青くなる。申し訳ないことをしたと思って、俺は慌てて視線を逸らした。
 ……よし、寝よう。どこ見てもガン飛ばしてるようにしか見えないだろうし。っていうか暇だ。今更人目を気にすることもないので、俺は堂々と腕組みをして目を閉じた。