兄貴には劣るが、俺もそれなりに顔は整っている方だ。ただ、この顔も、今では恐怖の対象でしかない。寄ってくるのは俺と喧嘩したいという奴で、友達なんて全くいない。正直、滅茶苦茶友達が欲しい。でも俺が話すと皆凄い速さで逃げていくんだよな。それでどうやって友達作れっていうんだ。俺ずっと一人だから、一匹狼なんて渾名付けられたんだけど。嫌なんだけど。友達欲しいんだけど! 因みに兄貴との関係は、何故だか(恐らくこんなのを弟だと思われたくないからだと思うけど)兄貴が明かしたくないというので、学校では鬼山と呼んでいる。俺たちの苗字は嘉山だけど、鬼教師だから鬼山と呼ばれているのだ。そんで、俺は仕方なく母親の旧姓、栗原となっている。学校での関係は、鬼教師(しかも風紀の顧問)と指導される不良、という感じ。俺、別に何もしてないのに良く呼び出される。いや、多少のことはしてるけど。売られた喧嘩は買う主義なんで。でも自分からは売らない。あとはサボってるだけだし…他の不良よりは大人しいと思う。だから絶対、嫌がらせで俺ばっかり呼び出してるぞ、こいつ。
 話を戻すが、俺には友達というものが今まで一人たりともいなかったから、漫画とかで妄想…間違えた、想像していた。いいよな、友情って。
 ぼんやりと空を見つめると、大きな舌打ちが聞こえた。端正な顔が俺を睨んでいる。

「お前…後で覚えてろよ?」
「えっ!?」

 大凡凶悪な顔で笑んだ兄貴は、そのまま屋上を出て行く。俺は慌ててその後を追った。後で覚えてろよとか、死亡フラグしかないんですけど…。











 強制的に席に連れられていくと、またかという風に皆俺を一瞥する。高校からの外部入学生は恐る恐る俺を見て初々しい顔を恐怖の色に変えた。今更何とも思わない……わけではないけど、慣れたのは確かだ。やっぱり多少は傷つくけど。
 チッと舌打ちをして席に座ると、俺の隣の席の奴らがびくりとあからさまに怖がる。あー…うん、今のは俺が悪いな。でも何かつい癖でやっちゃうんだ。許してくれ。
 今ではこうして人を怖がらせる対象の俺だけど、昔――小学生の時は根暗だった。人見知りに吃音の酷い言葉、猫背にボサボサの髪。オマケに大きなダサい眼鏡。渾名は空気くんだったな、確か。必然のように虐めの標的にされて、毎日が苦痛だった。学校休みたかったんだけど、それはあの俺様鬼畜兄貴が許してくれなかったのだ。「クソ餓鬼に負けてんじゃねぇよ愚弟が!」そう言われて、無理矢理家を追い出された。
 そして、いつも傷を作って帰ってくる俺を見て、我慢ならなかったのか、急に特訓してやると言い出したのだ。