結局あの違和感は消えないまま、時間は過ぎていった。喋っているのは主に國廣だったけど、こんなんでいいのか…? 無駄にゴージャスな時計を見ると、ここに来てから三十分が経とうとしていた。俺の視線を追って時計を一瞥した國廣は、残念そうに眉を下げて、立ち上がった。

「じゃあ、そろそろ交代ねー」
「ああ」
「…楽しかった?」

 不安に染まる顔。俺は安心させるように微笑んだ。

「楽しかったよ」

 三十分付き合わせといて、詰まらなかったなんてこと言えないし、実際結構楽しかった。俺の言葉を聞くと、國廣は嬉しそうに顔を綻ばした。

「そ、そっか! 良かったー」

 そして俺に手を振って背を向けると、先程入ってきた扉の向こうに姿を消した。
 ――さて、次は誰にしようか? 会長は最後だよな。副会長もまだ早い。つーことは双子か寡黙…よし、双子にしよう!
 俺は先程と同じように源氏名と役職名を入力し、送信した。



「ども」
「どもどもー」
「あ、ど、どうも…」

 軽っ。
 へらへらと笑いながら入ってきた二人に、俺は一瞬固まり、慌てて頭を下げた。

「あのさ」
「どうして俺らが双子だと思ったん? 俺たち似てないっしょ」
「あ、…えーと、雰囲気が、似てたんで」
「お、マジ?」

 セツ先輩が嬉しそうに微笑む。俺はにやけそうになる顔を必死に押さえ込んだ。――こ、ここここれは…! セツ先輩がライ先輩を好きっていうフラグが立ったぞ今!

「んじゃま、取り敢えずお邪魔しまーす」
「おじゃまー」

 俺の両側に座った先輩たちに少し緊張して背筋がピンと伸びる。ライ先輩は小さく笑うと、俺の肩を叩いた。

「そんな緊張しなくていいって」

 き、気づかれていた。悪戯っぽく笑うライ先輩に、軽く力が抜ける。

「なあ、えーと、蔦森だったよな」
「あ、はい」
「アッキーと同じクラスなんだって? あいつ、どう? ちゃんと馴染んでる?」
「えーと、まだ今日会ったばかりなので何とも言えませんが…」
「あ、そ、そうだったな」

 ん?
 急にライ先輩が苦虫を潰したような顔をして、その後苦笑した。