ニコニコとした顔で見つめられ、むず痒くなった俺は、誤魔化すように、早速一口飲む。

「お、美味しい…」

 俺、今まで生きてきてこんなに絶妙な甘さのジュース飲んだことないんですけど。思わず感嘆の声を漏らすと、國廣は嬉しそうに声を上げる。

「ほんとっ? 良かったー」
「流石高級品だ…」
「材料が高級なものってのも一応あるんだけどさ、これ、一応俺が作ってるんだよね〜」
「へーそうなん…エッ」

 こ、これ國廣が作ったのか? いや、でも作るっていうか、ミキサーで混ぜただけだろ? それは誰にでもできる、うん。

「本当はできたてを出したいんだけど、混んでる時とかさ、大変だからね。その時の為に作り置きしてるんだよ。言っておくけどー、これでも拘ってるんだからね? 止めるタイミングとか、隠し味入れたりとか」
「へ、へえええ」

 意外だ。
 失礼にも俺はそう思って、國廣を見つめる。ジュースについての拘りを語っている國廣の顔は教室で話していた時よりも数倍輝いている。他の人とも仲がいいし、上手くやってるんだろうな。……ん?
 俺は、ふと違和感を覚える。『他の人とも仲がいい』、『混んでいる時の為に作り置きしている』――? いや、他の人と仲いいっていうのは、金持ち五人組の一人だったら別に可笑しくはないか。一年生もいるとか言っていたような気がするし。あれ、そういや、そもそもどうして國廣はあんなに遠回しな言い方をしたんだ? それに、直接言うのではなくて、態々手紙(?)まで用意して。…まあ、それは、今どうでもいいか。
 問題は、混んでいる時の為に作り置きしているという発言だ。今日は入学式なんだぞ? 経験なんてないだろう。でも、この大変だからという言い方はまるで、前からやっていました、って感じだ。もしかしたら春休みに手伝っていたのかもしれないし、中学生のときから手伝いに来ていたのかもしれないけど、春休みに混むことは考えにくい。そして、いくらなんでも中学生が、頻繁に高校に入っていい訳がない。…どういうことだ?

「おーい、アキラちゃーん?」
「へ」
「どうしたの? ぼーっとして。あっ、もしかして退屈だった? ごめん!」
「あ、い、いや、違う。少し、考え事をしていて」
「もーアキラちゃんってば、こんな色男を目の前にして考え事なんて!」

 國廣が拗ねたように頬を膨らませる。…自分で言うなよ。