…早く送りすぎたか? 國廣は来たばっかりだし、何か準備とかしなければならないかも。じゃあ、結構待つかな。
 待っている間、何をしていようかと考えたとき、勢い良く扉が開く音が室内に響いた。

「お待たせ! アキラちゃん!」

 来るの早っ!
 キラキラとした笑顔を俺に向けてくる國廣は、先程の制服姿ではなく、本物のホストが着ているようなスーツだった。いつの間に着替えたんだ。早すぎると思うんですけど。

「あっ、アキラちゃん立ったままじゃん! ほら、座って座ってー」

 両肩を掴むと、ほぼ強制的に俺を座らせた。う、おおおお。この椅子意外にフカフカしてんですけど! 何でできてるんだろう…。

「何か飲む?」
「え」

 飲み物のところを開いたメニューを渡され、俺は目を丸くする。何で飲み物? ていうか、今思ったけど、指名してどうしろっていうんだろう。もう二人目送っていいのか? 寧ろもう全員分送っちゃっていいか?
 俺の考えてることが分かったのか、國廣が呆れたような顔をして肩を竦める。イラッ。

「え、って指名したんだからさ、折角だし、体験して行ってよ。もしかしたらアキラちゃんもやりたくなるかもよ」
「俺は…別にやりたくならないと思うけど」

 万が一この賭けに負けたらやらないといけないことになるけど、多分やりたいとは思わないだろう。それ以前に誰も俺を指名しないし。それに、やるとしても与えられるのは雑用だろうから。
 メニューに視線を落とし、何にするか考える。これが噂の絞りたてとかなんとかの高級ジュースか。値段は自販機のよりも少し高いくらいだから、これなら普通に来易いだろう。ていうか酒とかないし、美味しそうなケーキとかも載ってるし、普通のカフェみたいだ。

「ま、最初はそうだよね。俺もそうだったしー。――で、何飲みたい?」
「ああ、俺はこのあまおうジュースを…って、……え?」

 國廣がナチュラルに零した言葉に俺は目を見開く。俺もそうだった?

「はいはい、あまおうジュースね。あまおう入りましたー!」
「あいよ!」
「うわ!?」

 今どこから出てきた、この人!?
 出来上がった速さにも充分驚いたが、セツ先輩は床から顔を出したのだ。お盆を持って。それを國廣が慣れた手つきで礼を言いながら受け取る。

「はい、アキラちゃん」
「あ、う、うん。有り難う」