「ストレートフラッシュ」
「……ツーペア。あーあ、まーた負けかよ。ついてねえなー。おっさん如何様してんじゃねえだろうな」
「おっさん言うんじゃねえ。如何様なんぞこの俺がやるはずねえだろうが」

 ……人の声がする。目を開けると天井がぼやけて見えた。数度目を瞬いて、やがて意識がはっきりすると俺は慌てて起き上がる。
 ここ、どこだ? 確か変な夢を見て、それでウサギに背中を押されて――。記憶を辿りながら周りを見回すと、テーブルに向かい合っていた男の一人――ポニーテールの若い男と目が合った。

「あ、起きたのか。大丈夫かあ?」
「え、あ、ああ」

 そうだ、意識を失う前。この声が聞こえて頭に衝撃がきたんだった。思い出した途端にずきずきとした痛みがでてきた。
 ポニーテールの男は俺の傍に近づいてくると、そうかとにっこり笑った。

「悪いなー、あれがあんなにやばいものだとは…」
「ジャック、お前なあ…知っててあれ使っただろうが。俺たちが避けれると分かってて」
「あ、バレた? まあ怒んなよバレル。俺まさかあそこに人いるなんて思ってもいなかったんだぜ」

 ポニーテールをしている美形の男はジャック。そして三十代くらいのゴツイ男はバレルというのか。それにしても不思議な格好だ。どこかの民族衣装だろうか?
 俺は二人の会話を聞きながら周りを観察する。ログハウスのような広い家に、カントリー系の物が多い。お洒落な家だと、そういうのに疎い俺でさえ思う。

「なあ、アンタ。名前は?」
「瓜生大輔、…だけど」
「ウリューダイスケ? ウリューが名前?」
「は? …いや、大輔が名前だ」
「オーケー、ダイスケね。俺はジャック。ジャック=エイリー」
「俺はバレル=ベアリングだ。バレルって呼んでくれや」
「おっさん、アイリーン呼んできてくれよ」
「ああ? 何で俺が」
「俺ダイスケと話してえし。ほら、見た目的にも年齢的にも俺の方が適応だろ?」
「ったく…仕方ねえな」

 深い溜息を吐いて部屋からのそのそと出て行く姿は冬眠から出てきた熊のようだ。俺がその背中を見送っていると、ぽんと両肩を叩かれてジャックの方に強制的に向かされた。その際ぐぎ、と嫌な音と痛みがする。
 そしてぐい、と俺に顔を近づけると、じいっと俺を見る。ジャックの綺麗な顔を至近距離から直視してしまって、不覚にもドキリとした。

「うーん…普通、だな」
「は?」
「それに魔力も感じ取れないし、あれが避けれないとなると…」
「お、おい?」

 ぶつぶつと小さく呟いているジャックに、俺は恐る恐る声を掛ける。