「あれ、レイは?」
「レイ? どっか出かけてんじゃない?」
「…は!? ま、まさか外に!?」
「うーん、どうだろう」

 まさか。嫌な予感がして青褪めると、慌てて部屋を出ようとしたが、それは目の前にいる膨れ面のジョンによって阻まれた。「ボン様って、レイばっかりだよね」「は?」
 俺は意味の分からない言葉に眉を潜める。早くしないと、レイが万が一あいつらに見つかったら――。

「ここ数日、レイのことばっか。ボクつまんないよ」
「いや、そんなことは…!」

 確かに、レイのことは気になっている。だって、あの意味深な言葉を言うのも、俺のことを様付けで呼ばないのも、目で何かを訴えかけてくるのも……全部レイなんだ。
 それにしたって、悟られるようなことはしなかった。それでは何でジョンはこんなにも不満そうな顔で、レイのことを考えていると確信しているのだろうか。

「分かるよ。……分かる。だって、ボン様だから」
「俺だから…?」
「ねえ、違うんだよ、ボン様。レイは、レイは"ボクたち"じゃない!」
「な、何を言ってるんだよ! もうちょっと分かりやすく…」
「あいつが俺たちと違う顔をしているって言ったらどうする?」

 レイが違う顔をしている? そんな筈はない。自分の顔を見間違えることなんてしない。あれは俺の顔だ。
 俺がそう思ったのを感じ取ったのか、ジョンは顔を歪める。ああ、俺の顔ってこんな風にもなるのか。やはり、髪型が違うだけでイメージが変わる。

「レイは、ボン様の嫌うあいつらと同じ世界の人間だよ」
「あいつらと、同じ……?」

 俺は、ジョンが"あいつら"のことを言っていることに気づき背筋が凍った。何故知っているんだ? 自分の顔だというのに、酷く怖い生き物のように見えた。俺は壁に寄りかかり、そのままずるずると座った。

「分かった、ボン様? あいつは部外者なんだよ」

 ああ、頭が酷く痛い。