12

 加治は学校の近くまでくると手を放し、さっさと進んでいく。俺は結局加治が何をしたいのか分からないまま後を追う。

「あ、加治おはよー」

 知らない女子が加治の腕に自分の腕を絡ませる。加治は驚いた様子もなくにこやかに挨拶したのが耳に入る。女子の顔はほんのりと赤くなっており、俺はぼんやりとしながら、ああ、加治のこと好きなんだな、と思った。
 加治はモテる。顔立ちも頭も運動神経もいいとなれば、そりゃモテるだろ。しかも加治は表面上爽やか少年というか、俺以外のやつには基本的に優しくしている。
 勿論お世辞にも加治の性格は良いとは言えない。誰よりも俺が知っている。







 時は少し経って、数日後。

「あっちゃーん」

 俺は兄貴と買い物に出掛けていた。

「これとかどう?」
「……いや、俺には合わないでしょこれ」

 兄貴の持ってきた服はイケメンが着てそうなお洒落な服。この服の魅力をなくす自信がある。首を振って拒否をすれば、兄貴は不満そうに口を尖らせた。

「似合うと思うんだけどな」
「俺より兄貴の方が似合うって、絶対」
「そうかなー」

 うん。絶対。俺はこくこくと頷く。兄貴は少し照れ臭そうにしながら服を戻した。

「え、買わないの?」
「うん、今日はあっちゃんの服を選びな来たからね」

 ……ああ、そういや、そんなこと言ってたな。俺は朝の会話を思い出す。

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