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 というか、そんな顔をするくらいなら俺に関わるな。そう思ったのが顔に出ていたのか、クラスメイトは舌打ちする。

「お前――」
「相原、何してんの?」

 相原と呼ばれた男は急に声をかけられ、大袈裟なほど肩を跳ねさせた。俺はその声に気分が良くなかったのが更に地に落ちる。対して相原は安心したように顔を緩め、振り向いた。

「加治か、びびったー」
「おはよう」
「はよ、……や、こいつが俺の邪魔してきてさ」

 おい。……誰がいつお前の邪魔をしたんだ。適当なこと言いやがって。俺はこっそりと相原を睨んだ。

「ふーん…? こいつのことはさ、俺に任せといてよ」
「え、でも…」
「早く行かないと今度遅刻したら反省文じゃなかったっけ?」

 加治はにこりと笑って相原の肩を叩いた。

「あ、やべ!」

 途端に慌てた様子になると、相原は「あとは宜しく!」と言って片手を挙げ走っていった。そして取り残される俺と加治。……俺も走って逃げればよかった。

「さてと」

 加治は人好きのする笑みから悪魔の笑みに変え、俺にそれを向けた。

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