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 俺の前世である魔王の最期。信頼していた部下に裏切られ悲惨な最期だった。俺の人間不信――というほどではないが――はこのせいかもしれない。
 勿論加治は俺の前世を知っているはずがないので、今の言葉は現在の俺を嘲笑っているだけなのだろう。そうでないと、むしろ困る。

「……ん?」

 俺の顔を見て、加治は目を丸くする。もしかしたら、顔色が悪いかもしれない。どうしよう、この言葉で傷付くと分かってしまったら、また言われたら――。

「お前……」

 予想に反して、加治は意外そうな表情を浮かべた。梶は数秒間を開けて、ゆっくりと告げる。

「もしかして思い出したのか――魔王だった頃の記憶を」

 それは俺にとって死刑宣告のようなものだった。

「……っ」

 俺は声にならない悲鳴を上げる。それはつまり図星だと言うことで、加治はにやりと黒い笑みを浮かべた。

「……へえ? マジで思い出したんだ」

 加治は愉快そうに口にする。――何故、何故加治が知っている? 加治も前世の記憶を持っていたということか。誰だ? 俺が虐げた民の中にいたのか、それとも部下の中の一人なのか。


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